嫌いなものは嫌いと知ってくれ

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嫌いなものは嫌いと知ってくれ

 我が国に訪れる外国人観光客は年間3000万人を超えるようになった。 外国人観光客の大半は我が国の言葉を全く話すことが出来ずに訪れる。 そのような訳で観光地のスタッフは外国語を学ぶことを余儀なくされた、だが、外国語というのは取得に時間がかかるもの、一朝一夕に「はい、外国語ペラペラですよ」と、言うわけにはいかない。 そこで、政府はとある天才科学者に依頼をした。 「世界の全ての言葉を瞬時に翻訳する機械を作ってくれ」 天才科学者は「無茶言うな」と心の中で呟いた。世界の言語は約7000語あると言う、それを瞬時に翻訳する機械を作れなんて無茶も良いところである。しかも、その依頼はFAXの紙面で行われたものであった。直接、面ァ合わせろとは言わないが、せめて、電話で声を聞かせての依頼にしてほしいものである。天才科学者は乗り気では無かった。 「中国語と英語だけで十分間に合うと思うのですが」と、天才科学者はFAXで返信した。 直接政府に電話をするのだが、電話には出るものの声は一切聞こえない。 返信もやはりFAXであった。 「それ以外の国からもお客様がお見えになるんだから頼むよ」 天才科学者は中国語と英語だけで間に合うとは思ったが、注文は「世界の全ての言葉の翻訳機」であるために、不服ながらもその開発を引き受けることにした。 天才科学者は世界の全ての言語の辞書と音声データを集めた。ありとあらゆる言語の辞書の代金だけで政府より預かった予算は底を尽きた。天才科学者は予算の追加を政府に要求したが、言われた言葉は無慈悲なものであった。言葉と言っても単なるFAXの返信である。 「え? あれだけで足りるんじゃないの? 君、お金使いすぎなんじゃないの? もっと安く出来るんじゃないの? 来年、万博あって観光客もっと増えるんだから早くしてよ」 全く、金は出さないが出す口だけはいっちょ前である。天才科学者は完成後に追加料金をたんまりせびってやるつもりで自腹を切り、世界7000言語に対応する翻訳機を完成させた。
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