第2章 僕の夢?

2/6
25人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ
僕は少し走って車道に出て立ち止まる。 何となく分かっていたので、彼女に言われたからと言って何も変わらないのだが、それでも背が高くなる希望を持ち続けている自分の意思が、他人から指摘された事によって、簡単に揺らぎ、完全に希望を持ち続ける自分の意思が折れてしまった。 面と向かって背が伸びないと言われる事がこんなにも辛い事だったとは 僕はそんな事を考えながら、車道をキャンプ場の奥に向かって歩き始めた。 僕は背の大きさも野球の上手さも、そして彩香ちゃんの恋愛においても負けてしまうのか? せめて野球だけでも勝ちたいな 彼の長身から投げ下ろすストレートは、スピードも速いが球質も重い。高校野球の硬式ボールでは、更に彼の球質が生きる事は分かっている。 仮にプロ野球となれば、木製バットを使用しているプロ野球は、更に彼の球質は必要となる。 例えスピードが同じぐらいのスピードであっても、角度のあるストレートと重い球質を持っている彼には勝てない。 何だか考えるのが馬鹿らしくなる。 背が大きくなれば、対等に勝負が出来ると考えていた。 投げるスピードも大野と同じくらいには、到達したと自分では思っている。 彩香ちゃんより背が低いけど、告白しようかな? せめて彩香ちゃんより大きくなってから告白すると思ったのは、彩香ちゃんの好きなタイプと言う事もあるが、僕が彩香ちゃんへ告白するタイミングと願掛けでもあった。 そんな事を考えて歩いていると、キャンプ場の端まで来てしまったのだろう、大きな看板が目の前に現れた。 「車両通行止め」と書かれた看板であったので、 「僕は車では無い!」と看板に言って、奥に足を踏み入れる。 そこから少し歩くと ザー と音が聞こえてくる。 音は小さく、水の音かな? 僕はそのまま車道を音の鳴る方に歩き始める。 段々と音が大きくなってきた所で、また大きな看板が立ててあった。 「立入禁止」 立入禁止かあ 僕は立ち止まり、目の前にある大きな石に座った。 辺りは真っ暗で、懐中電灯が無ければ暗闇で道も分からない場所である。 ザー と少し近くなった音の方に懐中電灯を当てると。 大きな石2個分くらいの段差から、滝のように水が下に流れている。 高さは腰ぐらいの高さだったので、1mぐらいの高さだろうと思った。 僕は滝の方へ進もうとしたが、まだ平地工事をしていない場所なので、木が行く先を邪魔して進めない。 僕は諦めて、大きな石に座り直して懐中電灯を滝に当てて眺めていた。 無心とは、この事を言うのだろう。 ただただ滝の水の流れを見ているだけで、何にも考える事も無く、気持ちが落ち着いて来るように感じた。 すると、頭の上に ポツ! と雨が当たる。 雨? と考えていると ザアー! と勢いよく雨が降り出し、熱くなっていた体と心を冷やし始める。 僕は降りしきる雨に打たれながら、今後の事を考える。 しばらく考え込み僕は覚悟を決めた。 ヨシッ! 告白するぞ! 僕の気持ちは固まった。 そして立ち上がり、テントに向かって歩き出す。 今まで胸につっかえていた何かが取れた感じがして、この時の僕は、降りしきる雨さえも心地良かった。 少し歩くとさっき通り過ぎた「車両通行止め」の看板があった所が近づいてくる。 あれ? 真っ暗でよく分からないが、看板のところに誰か人が立っているよな? 看板に近づくと、そこには何故か彼女が立っていた。 「アンタ何やってるのよ!」 ? 僕は彼女が何を怒っているのかわからない。 「もう10時過ぎてるのよ! 私が言った事が、そんなに傷つけたんなら、謝るわよ。 だから帰って来なさいよ。」 その言葉で、身長の話の事を気にしてたのだと気づいた。 「もう大丈夫だから、心配かけてごめんね。 君が言った事は間違えて無いし、僕が現実から逃げてばかりいたから・・・ だから君は何も悪く無いよ」 すると、少し表情が和らぎ 「これ使いなさい」 と傘を差し出して来た。 「ありがとう」 僕は傘を受け取った。 「みんな心配しているから、帰るわよ」 「うん」 僕は持って来てくれた傘を・・・ させない! 「何やってるのよ!」 「ごめん、壊れているみたいで、開かないんだ」 「えっ!」 懐中電灯で傘を照らすと、傘を開くボタンが真横に曲がっていて動かない。 すると 「じゃあ、ここに入って!」 僕は彼女の言葉に従い、相合い傘をした。 そして、二人でテントに向かって歩き出した。
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!