第3章 近づく恋心

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第3章 近づく恋心

社長の車に乗る。 彼女は助手席に座ったので、一人で後部座席に座った。 「まったく心配させないでよね!マムシでは無かったのね!」 ? 僕はマムシのマの字も言って無いのに。 「しょうがない。勝利君も慌てていたんだろうから」 ? 違うのに! すると携帯が鳴り 「ちょっとすいません。携帯でていいですか、」 社長「彼女か?構わないよ。」 「違いますよ」 と言いながら、電話を取った。 電話の相手は幼馴染の秋山耕太だった。 彼は同じ中学校で同じ野球部。 そしてキャッチャーで5番バッターである。 ムラはあるが、HRの数では大野より多い。 「もしもし、何?」 「お前夏期講習、何で来なかったんだよ!」 「あれ?言って無かったっけ? 今、丹沢にキャンプに来てるんだよ。」 「キャンプ?お前が?何で?」 「色々あって、親父のキャンプに参加してる。」 「じゃあ今日の盆踊り来ないのかよ? お前以外は、皆んな集まるんだぞ! 勿論、彩香ちゃんも来るんだぞ! それに祐輔も来るんだぞ!」 祐輔とは大野の事である。 「もういいよ。 あっそういえばナックルを教えてくれて、これがいい感じなんだよ。帰ったら受けてくれる?」 「中学野球は、この前終わっただろ?」 「高校に向けてだよ。」 「お前、まだ小学校の時の夢を追ってるのか?」 「うん。俺は夢を実現させる。絶対に甲子園で優勝してやる。」 「しばらく言って無かったから、諦めたのかと思ったよ。」 「キャンプに来て、思い出したんだ、俺の夢」 「そうか、まあキャンプ楽しんで来いよ。 俺は奈緒と踊って来るから」 「うん」 携帯を切ると 莉乃が「夢って何?」 知っているのに、ワザと聞いてきたので、僕もワザと聞いて聞かないフリをした。 すると社長が 「私にも教えて欲しいなあ」 ちょっと照れながら 「小学生の時の夢だけど (甲子園で優勝投手になってプロ野球選手になる。) って言う夢です。」 「それは凄いな。 じゃあ莉乃は、プロ野球選手の奥さんになるのが夢なのかな?」 「だからパパ!違うって言ったでしょ!」 社長は笑いながら 「ごめんごめん。もうそろそろ夕飯の支度が終わる頃かな? 今日はバーベキューだから、いっぱい食べて甲子園を目指してくれよ」 これから高校に行くんだけど・・・ まあいいか 車がキャンプ場について、大テントに向かって歩いていると、いい匂いが漂ってきた。 父が顔を赤らめながら 「社長!先に食べてます。 早くしないと無くなっちゃいますよ」 自分の息子の事で、社長が病院に行ってくれたのに、どうしようもない親である。 社長が「ごめん、すぐ行くから」 と父に大きな声で伝える。 僕は父に代わり 「すいません。うちの父が」 と言うと、意外な返事が返って来た。 「お父さんは、本当に素晴らしい人だよ。この会社が続けれたのもお父さんのおかげなんだ。 それに、お父さんの明るくて頼り甲斐のある人格に不思議と皆んなが集まってくる。 お父さんは、僕の会社の宝なんだ。 あっこれはお父さんにもお母さんにも言わないでね。」 うちの両親に言ったら、有頂天になって何をするか分からない。 ただ社長の言葉を聞いて、ちょっとだけ誇らしい気分になった。 社長が走って大テントに向かった。 僕は歩いて大テントを目指していたが、後ろから莉乃の声が聞こえた。 「親が良くっても、子供は最悪って事は、良くある話だからね。」 そんな嫌味も、病院に行く途中の彼女の言葉を聞いた僕は、笑顔で彼女の話を受け止める。 「何か気持ち悪いわね。本当は毒が回ってるんじゃあないかしら」 と言って大テントに走っていった。 愛情では無いにしろ、僕の事にいくらか好意を持っているのが分かった僕は、この時から彼女の事を一人の女性と見初めていたのであった。 大テントに着くと、父が酔っ払いながら 「勝利、ここが空いてるぞ」 と父の横の席を指差す。 どこでも一緒だろうと思った僕は、渋々父の横の席に座った。 父の席の前には、先程ナックルを教えてくれた川村さんが座っていた。 川村「小野さんの息子さんは、本当にいい球を投げますよ」 と父に話す。 野球の事は殆ど知らない父だが 「そうなんだよ。結構いい球投げるだろ?」 父は僕が投げたところを見た事無いはずだが? 「そういえば、小野さんから依頼されていた事ですが、ナックルを教えましたよ。 予想以上のボールでした。 僕が教えたナックルが甲子園で投げてくれる、来年以降が楽しみになりました。」 「そうか、ナックルねえ」 と父は、ビールを飲み干す。 多分、ナックルも分かっていないだろう。 ただ父が川村さんに、頼んでいた事は意外だった。 「この子は、夢を追いかけているから、何としても叶えて欲しいんだよなぁ」 だいぶ酔ってる。 僕は席を立ち、母の所に行き 「ねえ母さん。父さんが飲み過ぎてるよ。少し注意した方がいいよ」 「へえ?なりが?」 ダメだ! こっちも飲みすぎてる、 僕はしょうがなく席に戻る。 父は上機嫌で笑いが絶えない。みんなも盛り上がり、席は大盛り上がりだ。 僕はお腹いっぱいになったので、席を立とうとしたら、両肩を父に掴まれ席に座らせられる。 「お前は、絶対に夢を叶えるんだぞ! 父さんは、最後の最後で夢が叶わなかったから、お前は絶対に叶えるんだぞ!」 とそれだけ言って、その場で寝てしまった。 もう飲みすぎだよ 僕は父をそのままにして、テントに向かって歩き出した。 それにしても陽が落ちると心地の良い風が吹いてくる。 僕はテントの前の椅子に座り夜風に当たる。 すると母さんと莉乃がテントに向かって歩いて来た。 「母さん達、先にお風呂入ってくるね キャンプファイヤーは21時からだけどね、お風呂は22時までだから、先に入らないと入れなくなるのよ。 勝利は昨日も入って無いんだから、アンタも入りなさい。」 「えっ!昨日も入って無いの? ちょっと1m以内に入らないでくれる!」 知ってるくせに 結局3人でお風呂に行く事になった。
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