第4章 いつか恋が

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第4章 いつか恋が

「勝利、起きろ!時間だぞ!」 「えっ何時?」 「もう3:00だぞ!」 「僕はギリギリでもいいんじゃないの?」 「面倒を見る子のテントを覚えないとダメだろ!」 「テントの場所は、書いてないの?」 「無い。というか聞くのを忘れた。」 「え〜それはないでしょ!」 僕は半身起きる。 あれ? 「何で母さん寝てるの?」 「母さんは、ギリギリまで寝かせてあげるんだよ。」 「えっ何で?」 「そりゃ〜女性だからな」 もういいや 僕は起き上がった。 朝は結構冷える。 取り敢えずトイレに行って来よう。 僕はトイレに行って、戻って来ると、父が大テントの所にいたので、父の所に行った。 「勝利、俺たちは7時に帰って来るから、ご飯だけ炊いといてくれるか?」 「炊き方なんて分からないよ」 父が本をテーブルの上に置く。 本の題名は「キャンプ入門」と書かれた本であった。 「ここに飯盒の使い方が書いてあるから、3個炊いといてくれるか?」 「出来るかな?」 「大丈夫だよ。誰かしら起きてくるさ」 「火は焚いてあるから、火にあたってれば寒く無いだろう」 確かに寒いので、火があるだけでも助かる。 徐々に人が集まって来た。 社長も起きて来ている。 父「お子さんがテントに残っている人は、区画を書いといて下さい」 二人が紙にテントの場所を書きに来た。 えっ? 2家族? それも小学2年と3年の子供だ。 これってお守りいる? 幼稚園生やそれ以下の幼児達は、母親が残って父だけが日の出を見に行く事になったらしい。 昨日の蛇に噛まれた事も、当日キャンセルした原因になっているようだ。 まあいいか もうすぐ3:30になる。 「勝利、母さんを起こしに行ってくれ」 「えっ?まだ来てないの?」 僕はテントに走って行くと、 まだ寝てる! 「母さん、起きて!もう出発しちゃうよ」 「えっ!」 母は跳び起きる。 そして、そのままテントを出て行った。 服は寝る時に着替えていたが、化粧はしなくていいのかな? 慌てて母がテントに戻ってくる。 大急ぎで化粧を終わらせて、また出て行った。 結局5分遅れで出発して行った。 僕は大テントの所で大きい石で作った石釜に焚かれた火にあたって寒さを凌ぐ。 それにしても寒いな 手を擦りながら火にあたっていると、莉乃がテントから出てきて、こっちに向かって歩いて来た。 「おはよう、寒いわね」 Tシャツに短パンで来れば、寒いに決まっている。 「おはよう。その格好では寒いだろう?」 「うん、寒い。 ねえ、コーヒー入れてよ」 しょうがない 僕はガスコンロでお湯を沸かす。 「ねえ、長ズボンに着替えて来れば?その格好では寒いだろ?」 「うん。面倒くさいからいいよ。そのうち日が出るでしょ」 「日が出るのに、まだ1時間近くあるよ」 「じゃあ毛布持って来てよ。」 何で俺が? まあいいか 僕は自分の家のテントに行き、毛布を1枚持って来て、莉乃に渡した。 すると丁度お湯が沸いたので、インスタントコーヒーを入れた。 「はいコーヒー」 「ありがとう」 と言って、座って釜の火にあたりながら、毛布を肩に掛けてコーヒーを飲み始めた。 「あ〜あったまる」 まだ日も明けていないので、火の前に居ないと肌寒さが身にしみる。 寒いな すると莉乃が僕の横に来て、毛布を半分くらい僕の肩に掛けてくれた。 「これなら寒くないでしょ」 と笑顔で言う。 ! 僕達は1枚の毛布を二人で羽織る事になった。ただギリギリ肌はぶつからない距離なのだが 近い 胸の鼓動が早くなったまま、なかなか収まらない。 アドレス! アドレスを聞きたい。 そんな自分との葛藤が繰り返される。 莉乃が手に持っていたコーヒーを飲み終わり 「この紙コップも燃やしちゃおう」 と言って、紙コップを火の中に入れる。 紙コップは、徐々に火がついて、あっという間に燃えて灰となって行く。 何故か虚しい気分になる。僕達が二人でいる時間の様で、すぐに灰になった紙コップを見つめながら 「莉乃、アドレスを教えて欲しい。」 胸の鼓動が更に早くなる。 「いいわよ」 と言って携帯を出した。 やったあ! 言えた 僕も携帯を・・・ あれ? テントに置きっぱなしだ! 「ごめん、テントまで取りに行ってくる。」 恥ずかしい 僕はテントに走って行き、携帯を持って大テントまで戻って行った。 「ごめん。」 と彼女に謝り、アドレスの交換をした。 さっきまでの鼓動の早まりは収まり、再度二人で毛布を羽織り火にあたる。 すると彼女が話し始める。 「私、男性恐怖症だったんだ。多分、今もショウリ意外はそうだと思う。」 その後は、男性恐怖症になった原因、そしてそのせいで母について行けなかった事を、包み隠さず教えてくれた。 僕は母から概要は聞いていたので、驚く事なく彼女の話を黙って聞いたのであった。 僕は彼女を守っていきたいと、再度思うのであった。 そして彼女は僕に寄りかかる様に肩を寄せた。 「この方がもっとあったかいね」 と、この至近距離で、僕の方を向いて微笑んだ。 まるで恋人みたいだ。 いや、この時は恋人と錯覚していたのかも知れない。 数センチで莉乃の微笑む笑顔がある。 僕は自然と莉乃の唇に軽くKISSをしていた。 あっ! すぐに自分の行った行為の間違いに気づくが・・・ 莉乃は僕を突き飛ばしてテントに走って戻って行った。 何て馬鹿な事をしちゃったんだ! これって莉乃が一番嫌いな事だよな? 分かっているのに、分かっていたのに・・・ 僕は自分がやった行為を悔やむ。 ! 莉乃は? 莉乃は大丈夫かな? 母の言葉を思い出す。 「勝利には恐怖を感じないんだって」 とにかく謝ろう! 僕は莉乃のテントに向かう。 閉めてあるテントの外から莉乃に話し掛ける。 「莉乃、ごめん。」 返事が無い 「俺、莉乃が一番嫌いな事しちゃった。 何であんな事しちゃったか、自分でもよく分からないんだ。 ごめん。」 「向こうに行って! 向こうに行きなさいよ! アンタと喋りたくない。」 僕は返す言葉が見つからない。 ただ一つだけハッキリした事があった。 「俺、本気だから。 こんな短い時間で信じられないと思うけど、 俺・・・ 莉乃の事が好きだ。 さっきはごめんね。」 僕はとうとう告白してしまった。 自分でも信じられない。 ただ、今言わなければ、全てが終わってしまう様で怖かった。 僕は大テントに戻った。 本当に勝手な話だが、僕の心は晴れやかな気分になっている。 生まれて初めての告白をした達成感からきているのか分からないが、気分が高揚している。 陽が昇り始めた。 あっ!ご飯! 石窯に木を足して、火の勢いを強くして、3個の飯盒に火をあてる。 なかなか炊けないなあ・・・ 僕はいつのまにか寝てしまった。 「アチッ!」 男性の声が聞こえる。 僕は慌てて目を開けて 「あっ!すいません!」 そこには社員の男性が立っていた。 2つは微妙だけど、1つは何とか食べれそうだよ。 と笑顔で言った。 「すいません。寝てしまいました。」 「いいよ、こっちこそごめんな、飯まで作らせちゃって」 いい人だ 「ただ皆んなの分までは無いかも知れない。」 僕は肩を落とす。 「大丈夫だよ。社長がカップヌードルいっぱい持ってきてたから」 ? あれ? 昨日、延びたラーメンを無理して食べた莉乃の事を思い出す。 俺が作った事を気にして、無理して食べてた事に気づいた。 そんな優しい子に僕は・・・ 飯盒を新聞紙の上でひっくり返し、しばらく置いて元に戻す。 そして蓋を開けると、2つの飯盒の底は焦げだらけになっていた。 そして焦げてないところだけ取り出して、1つの飯盒に取り分ける。 結局3個の飯盒が2個になってしまった。 父達が戻って来た。 各テントに居た人達も大テントに集まって来た。 父と社長が話している所に出向き 「ごめん、ご飯炊くのを失敗してしまって、2つしか飯盒炊けなかった。 すると社長が、 「いいよいいよ、カップヌードルあるから」 と、ご飯作りを手伝ってくれた社員と同じ事を言った。 すると、莉乃がテントから出て、こっちに向かってくるのが見えた。 すぐ近くに来たので 「莉乃?」 と小さい声で呼び掛けるが、莉乃は無視して通り過ぎて、そのまま社長に 「今日何時に帰れるの?」 と聞いた。 嫌われた!
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