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第2章 僕の夢?
(莉乃)
肝試しが終わって、皆んなが帰って来た。
大人達は大テントにそのまま行き、酒を飲むらしい。
子供連れの家族は、キャンプ場内の大浴場に向かう人が多い。
父も小野さん夫婦も、大テントに直行していったので、私は一人で大浴場に行こうと思ったが、アイツが帰って来ていない事を伝えておこうと、大テントに足を運ぶ。
圭子さんの所まで行き、耳元で話し掛ける。
「さっき、身長の事を息子さんに伝えたんですけど、伝えたと同時に走って、何処かに行ってしまって、まだ帰って来ないんです。
大丈夫かな?」
予想していた通り、圭子さんは
「大丈夫よ。気にしないでいいわよ。莉乃ちゃんって優しいわね」
!
「別に優しい訳ではないです。」
取り敢えず伝えたし、お風呂に行こうと歩き出す。
大浴場は、管理棟の所にあるので、さっき行った肝試しの入口の近くだった。
たかが身長の事ぐらいで大袈裟ね。
背が高ければ野球が上手くなる訳が無いでしょ。
世界で一番背が高い人は、どれだけ上手いのかしら?馬鹿馬鹿しい!
私はそんな事を考えながらお風呂に入った。
湯船に浸かりながら、今日1日を振り返る。
アイツのアイスクリームを叩きつけて、アイツが子供を助けて溺れて、アイツが鹿から守ってくれて、アイツが・・・
今日1日でどんだけアイツが出てくるのよ!
と自分に突っ込む。
アイツ何処行ったんだろう?
私は、お風呂を出てテントに戻る。
まだ帰って来ていないんだ・・・
そう思いながら、テントに入る。
美希にLINEでもしようと、携帯を取り出して、画面に映る時間を見たら、21時を過ぎている。
LINEを打とうとした瞬間、
ポツ、ポツ
とテントに雨が当たる音が聞こえた。
その音は、すぐに激しい音に変わる。
結構降ってきたな
どうしよう?アイツは、まだ帰って来ない。
傘を持って探した方がいいのかな?
でも、私が心配する事は無いわよね。
と自問自答する。
雨の音は激しくなるばかり
もう!せっかくお風呂に入ったのに!
私は2本の傘を持って、テントを出た。
確か管理棟の方に走って行ったわね。
雨足は強く、舗装されていない道なので、雨が跳ね返り、瞬く間に足が汚れる。
あ〜あ。せっかくお風呂に入ったのに
管理棟まで辿り着いたが、アイツの姿は見当たらない。
本当に世話がやける奴!
山には行く勇気も無かったので、キャンプ場の他のエリアを探しに行く事にした。
キャンプ場入口から管理棟までは私達がいるAブロック、管理棟をそのまま通り過ぎるとB、Cブロックのテントエリアに行ける。
山側には舗装されていない車道があるが、車道は狭く車が通るので、私はテントエリアを突っ切って他のテントエリアに行く事にした。
この管理棟の周りのバンガローがDブロックなので、B→Cへと足を踏み入れる。
まずはBブロックを探索するが、アイツの姿は見当たらない。
続いてCブロックに着くが見当たらない。
結局このキャンプ場の端まで来てしまった。
キャンプ場の端は、工事用ポールが車道まで延びていて、等間隔に「建設予定地」と書かれたプレートが付いてる。
う〜ん、これ以上は無理ね。
ここまでやったんだから、もういいかな?
と自分に言い聞かす。
取り敢えず帰りは車道から帰れろう。
とポール伝いに車道まで歩いた。
車道には「車両通行止め」と書かれた、大きな看板が置いてあった。
大きな看板を見つめ、
人なら入ってもいいの?
この場合、立入禁止よね?
と看板に向かって、ツッコミを入れると
通行止めになっている道の奥から、(ユラユラ)と灯りが揺れながら、こっちに向かって来る。
人魂?
目を凝らして見ると、懐中電灯を持った人が、傘もささずに歩いて来るのが分かった。
更にその人影が近づいて来た時、その人影がアイツだと分かった。
見つけた!
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