雨止め

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 その日は雨が降っていたんだ。  だから気がつけなかった雨に濡れる子猫の姿に。  その日も雨が降っていたんだ。  だから気がつけなかった親を探して歩く子供の泣き声に。  その次の日も次の日も雨が降っていたんだ。  目の前で老人が重い荷物を持っていても。目の前で青年が足をくじいて歩きづらそうにしていても。目の前で少女が風に飛ばされる風船を追いかけていても。  気がつけなかった。  そしたら、知らない人が僕の目の前に現れてこう言ったんだ。  「雨はいつか止むよ。きっと晴れる。そしたら、虹がかかるよ。それはきっとそれまでの雨を打ち消してしまうほどにキレイなんだろうさ。」  その人は晴れ晴れとしていたんだ。雲ひとつない空模様だった。  その日は雨が止んでいたんだ。  目の前に財布を落として行ってしまいそうな人がいたんだ。  気がついたら財布を届けてたんだ。  落とした人は嬉しそうに「ありがとう」と僕に言ったんだ。  その日見た虹はえもいわれぬ美しさだった。
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