1.せめて…

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 現在どのような風景の所を走っているのかは分からない。 しかし舗装されていない道を走っているのか、御者が下手なのか、馬車が走るたび振動がガタガタと起こる。 その振動でガチャガチャと音を立てているのは、鎖や荷馬車についている南京錠だろうか。  外見は分からないが、荷馬車の中は少し古そうな木の板の床に、六本くらいの弓形に反っている木の棒と、その上に分厚く頑丈そうな布が床ギリギリまでかけられ、屋根のようになっている。幌馬車と言いたいところだが、ぞんざいな作りがそうとしか説明のしようがない。  御者の方には、木の板の壁と木の板を蓋にしていそうな小さな窓があり、反対には中からも蹴られれば壊れそうな、あまり分厚くない扉が設けられている。  そして目を一緒にいる人に移すと、数名しかいないが攫われた子供が乗っているようだった。しかし何故か怯えていない。  何故だろうか、と考えようとしたが自分も現実逃避中なのだから他も似たようなものだろう。  助かる保証はないがせめて子供を買った相手が優しい奴なのを願うだけだ。 「みんな何歳なの?」  突然左斜め前から少女の声の持ち主が、現実逃避の一環なのか、戻ってきたのか、質問してきた。 その質問に返答をする気がある者だけが声のした方へ意識を向ける。  身なりも貴族や金がある家の子ほど良くなければ、座っているため背すらも分からない。  顔つきを見る限り、声をかけてきた人に意識を向けたのは、多分自分と同じくらいだろうという年の子供ばかりだ。  皆平民の格好をしている。 例外に背だけは自分だけ長身であるように見える。 「僕は誕生日が来たら13だよ。」 「私も右に同じよ。」 「俺はもうすぐ14だな。」 「え?俺も答えなきゃいけないのか?……。 今年で16だ。」  どうやら自分だけ高等部の年齢のようだ。  四人の他にもまだ10歳にも満たない子供もいるが、震えているので放置だ。 どうにもしてやる事は出来ない時は見なかったことにしてしまう。  ……そもそも自分らも攫われたのだからどうしようもないのだが。
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