1.せめて…

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 唐突なような気もしなくもないが、この世界は誰しも命あるものは、人間だろうが、植物や動物だろうが、人間とは別の種族だろうが、最低でも生活で役に立つ程度の微量の魔力を持っている。  鎖に魔力封じが追加されているらしいが、実際この鎖は安いやつだろう。  こいつ等人身売買のおっさんらは知ってか知らずか分からないが、豆知識として安い魔力封じの鎖、まあ手枷や足枷なんかもあるが、それらは魔力量が多い奴らの魔力は封じられない。  ちなみにさっき世間話をしていた俺含め四人は、魔力量が無駄に多いらしい。 が自分はここで逃げても、大体どのあたりの森という認識しかない場所では、とごちゃごちゃ誰に言うわけでもない言い訳を頭に浮かべたが、主に面倒くさいから行動に移さない。  こいつ等も逃げる気はないようでやれやれと呆れた表情をしていた。  実際会場だろうが市場だろうが上手く掻い潜って王都で売る予定だろう。  そもそも自分は王都の人間だ。  恋人には浮気され、両親は馬車の事故とされた原因不明の死を遂げ、人と関わるのが面倒にいや、怖くなったって言う理由で、田舎村の山に勝手に住み着いていただけの話である。
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