未来電話

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 小学校よりずっと広い校舎にも、少し袖の長い制服にもようやく()()んできた四月の終わり。  覚えたての掛け声を響かせて走り込む野球部、頼りないホルンの音を鳴らす吹奏楽部、ホールでぎこちなくステップを踏むダンス部。新入部員を迎えたいくつもの部活動が、それぞれの熱量で力を入れ始めているのを感じる。  幼稚園からの仲である()()に誘われて入部した文芸部は、部員が少なく、活動目的も帰る時間も自由な、のんびりした部活だった。  放課後は文芸部の部室に変わる理科室で、一人で本を読んでいると、遠慮ない音で扉をガラッと開けて花凪が入ってきた。何やら興奮気味に。 「(まつ)()、見てこれ!」  机にバシンと広げられた紙を見れば、 【新入生必見、()()()町の都市伝説特集!!】  と、題字が踊っている。 「私こういうの好きだからさー。掲示されてたの見かけて、新聞部にコピーしてもらったんだ」  噂話や口コミ情報集めが好きな花凪らしい。  それでも陰口を扱わないのが花凪の良いところで、友達として安心できる。話してもいい話題かどうかを正しく判断できる子だ。 「まだ春なのに、怪談話には早くない?」  私の反応に「もー、違う違う」と不満げに唇をとがらせる花凪。 「怪談って、つまりは怖い話でしょ? 都市伝説は怖い話ばかりじゃないから、都市伝説の中には怪談もあるって言えばいいのかな」
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