―ep.3―「美しい薔薇」

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目を見張るほどの美貌はいつ何時でも健在ではあるのだが、華やかな薔薇の花でいる彼を見られるのは、実は本番と、衣装をしっかり揃えたリハーサルの時だけなのだ。 というのも、稽古場などで目にする普段のロゼは、上下黒のジャージ姿を決め込み(たまにグレーだったりもする。貴重なバリエーション…)、誰とも目を合わせずに部屋の隅っこで三角座りをしているような有様なのだった。 必要最低限の言葉しか発さず、極力誰とも絡まないようにつとめる。 意図的に存在感を消そうとしているようにも見えるその姿は、キルシェにとっては劇団の中でもかなり大きな謎だった。 団員達の大半と同じく、初めてロゼを見たのが舞台上で華々しく女形を演じている姿だったため、入団初日の顔合わせの日にはその違いに驚かされたものだ。
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