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初日に驚かされたといえばもう1つ。
同じ日に入団したもう1人の少年――つまりランケが、顔合わせが終わって5分間の小休憩に入るやいなや、存在を殺しているロゼのところへ一目散に駆け寄って、初めましてに代わる第一声で、高らかにこう叫んだのだ。
『好きです!!』
キルシェは今も、あの耳にキンとくる叫び声を鮮明に思い出せる。
当然のことながらその一件は、フロイラインに代々語り継がれる伝説となったわけだが、恐ろしいことにランケは今でも毎日のようにロゼへ愛を叫び続けているのだ。
受け入れられる気配は皆無でありながら、怒られるでもなくガツンと断られるでもなく「はぁ…」と「どうも…」のローテーションでやり過ごされているため、ランケの猛アタックは今後も延々続いていくことが予想される。
(迷惑だって言ってやればいいのに……ロゼさん優しいからなぁ)
他人を避けて自分の存在を消そうとしているロゼだが、キルシェは不思議と彼に対して温かい印象を持っていた。
具体的に何かがあったのかといえば正直何も思い出せないのだけれど、ロゼには何か、そっと寄り添ってくれるような優しさが見えるのだ。
「看板女優」などという異名が付けられてしまうほど、美しい女性として見られてしまっていれば、芝居以外であまり男達と触れ合いたくないというのも仕方ないのかもしれないと考えれば納得がいくし。
ジュニア団員の間ではとうとう「地縛霊」などというあだ名が付いてしまったロゼだけれど、皆が言うほど変な人というわけでもないのではないかと、キルシェは最近ますますそう思うようになっていた。
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