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男性オンリー劇団『フロイライン』は、今年度は正団員ジュニア団員各10名ずつという結構な規模を誇っており、傾向は割とアングラ寄りでどちらかといえば知る人ぞ知るという感じだが、根強いファンはどこまでも根強く、一度嵌ったら抜け出せない中毒性があると一部の人間からはなかなかの評判だった。
その毒に魅了される一部の人間達を一度捉えたら決して放さないのは、何よりも「あの」座長の創りだす唯一無二の圧倒的世界観であることは間違いない。
監督業に徹して表舞台に一切立たない座長は、「大地」を意味する《ボーデン》という名を有し、その地に生きる「植物達」の全ての基盤となっていた。
年齢も職業も身元も、何もかもが不明。
相当な金持ちだということは見て取れるが、家業が謎である限りはそのブルジョアぶりも何だか不気味だ。
そんな怪しい人物の元に身を置く覚悟ができる者がなぜこんなにいるのか。
渦中の人であるキルシェも、自分を含めた団員らの心理がわからない。
それでも彼らは今日も座長の創りだす世界に、そして彼そのものに惹かれてしまう。それでこそこの集団は成り立っているのだった。
なぜ男性のみで結成されているのかも、なぜ、男性のみなのにフロイラインなどという名前が付けられているのかも、深く考える必要のない、どうでもいいことでしかなくなってしまうのだ。
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