―ep.2―「うっとうしい蔓」

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それにしてもランケの絡み方は本当に鬱陶しい。 所構わずベタベタくっついてくるわ、変なちょっかいを出してくるうえ怒ると喜ぶわ、小学生みたいなしょうもないイタズラを毎日のように思いついては試してくるわと、とにかく相手をするのが非常に疲れる。 この前はシャワーを浴びて脱衣所に戻ったら、キルシェの下着が真っ赤なふんどしにすり替えられていた。 怒ってバスタオルを巻いたまま稽古場に乗り込み、ケタケタ笑いながら逃げるランケを追いかけて走り回っていたら、ちょうどそこへ先輩達がやってきて二人でしこたま叱られた。 そんな調子でいつも迷惑を被っているキルシェだが、本気で拒絶したり嫌いになったりできないというのも自分でよくわかっているので、ランケに関してはもう諦めている部分が大きかった。 イタズラが成功した時の楽しそうな笑顔や、小さな子供のように甘えてくる仕草を見ていると、どうしても温かい気持ちになって自然と笑みがこぼれてしまう。 初めて入った劇団で、毎日すごい緊張感の中でも楽しくやってこられたのは、他でもなくランケのおかげだ。 同じ日に入団した同い年の彼がいつも傍にいてくだらないちょっかいをかけてきてくれるから、今日もこうして笑っていられるのだろう。 先程から自分をしつこく海に落とそうとしてくる彼を軽くあしらいながら、何だかんだ楽しい夏休みになりそうだなとキルシェは胸を踊らせていた。
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