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―ep.3―「美しい薔薇」
続いてキルシェは、この劇団に欠かせない存在である「あの人」の姿を探してみた。
しかし予想通りというべきか。
皆が集まって船からの景色を楽しんでいるデッキの上には、当然のように彼の姿だけが見当たらなかった。
人との接触を拒みがちなあの人は、恐らく合宿なんて相当嫌だったに違いない。
ちょっと可哀想に思いながらも、4人の選抜メンバーの中に彼が入らないというのはとても想像ができないことなので、こればかりは仕方ないよなあと思うしかないのだ。
男だけの劇団で、男でありながら異彩を放ちある意味とても目立っている存在。
「女形」の《ロゼさん》は、そこらの女性が束になってもかなわない、美しく可憐に且つ華やかに咲き誇る大輪の薔薇(Rose)だった。
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