春の章「片恋消しゴム」 ③ るりSide

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(あれ……?)  それは、昼休みが終わった五限目の授業の時に気がついた。肝心なものが、ペンケースから消えていたのだった。  あの消しゴムが、ない。 (え、なんで? どうして?)  首をかしげて何度もペンケースの中身を確認するが、やはり消しゴムは見当たらなかった。  たしかにさっきの理科の授業では、あったはずなのに。ということは、消しゴムだけ理科室のどこかに置いてきてしまったのだろうか。  やだ、絶対に見つけなきゃ。  拾われるだけならまだいい。でも万が一にでも、ケースから外されたりしたらやばい。あれが他人の目にさらされたとなっては、恥ずかしすぎて死んでしまう。  私はあせる気持ちを抑えて、とりあえず書き損じたノートの文字をシャープペンで潰した。  そのとなりでは何も知らない中曽根がまたしても、先生の子守唄でこっくりと船をこいでいたのだった。
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