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夏の章「好きと伝える」 ① 悠Side
自分でも、何であんなことをしてしまったのかなんてわからなかった。
でも、グラウンドから職員室の中をふと見たら、あいつがいて。カギを理科の先生から受け取っているのを見て、消しゴムを探そうとしているんだって気づいたらそうしていたんだ。
あわてて自分の消しゴムに彼女の名前を書き込んで、本人に見せた。
戸田は真っ赤な顔をして、驚いていた。
気恥ずかしくなった俺は「勝負な」なんてごまかして、逃げるように廊下を走った。
でも、その足取りはとても軽くて速かった。
このまま走って足は地面を離れてしまい、空に駆け上がれるんじゃないかと思うくらい──軽やかだったんだ。
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