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何で、こんなことになっちゃったんだろう。
帰宅して夕ご飯も食べ終えた午後八時になっても、私の心は晴れることなどなかった。
自室のベッドの上で、ごろりと横になりながら思い出すのはひたすらに、今朝の小さな大事件のことばかりだった。
おまじない消しゴムで消え去った、中曽根とのたわいない会話の時間。
あれ以降、中曽根とはギクシャクしてしまったまま、一日が終わってしまったのだ。
(でも、当たり前だよね。あんな態度とっちゃったら……)
何で、消しゴムを貸しちゃったんだろう。
何で、もっとスマートにやれなかったんだろう。
何で何でと、いまさら取り返しのつかない後悔をくり返しては、胸が痛む。
こんなに不器用な自分に、嫌気がさしてくる。
中曽根、私のこと嫌いになっちゃったかな。
もしかしたら今日のことで、一気に嫌いになったかもしれない。
だって、帰るまで一度も話してくれなかったし、目が合ってもすぐにそらされてしまった。
今朝の行動が、今まで繰り返していた中曽根とのたわいもない時間を、終わらせてしまったのかもしれない。
一瞬──だ。
好きになるのも、嫌いになるのも。
それを私は、よく知っている。
移ろいやすい私たちの気持ちは、一瞬で変わってしまうんだ。
それを私は、あの日に知った。
小学六年生の夏。
中曽根にあっという間に恋をした、とある一日を思い出していた。
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