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「ねぇ、ほら、とっても似合うよ」
「いやいやいやあり得ねえから。つかどうせならお前が付けろよ」
「イヤ」
「こっわ!真顔か!?」
クリスティエラの街はギルドが多く、それにともなって人の出入りも多い。
今俺とリーリーは、観光客向けの露店の前で、動物の耳がついた帽子をお互いの頭に押し付けあっていた。
なぜかと言うと、露店の前を通りかかった時に、俺がチラッとこの帽子を見てしまって、何をどう勘違いしたのか、リーリーの「欲しいの?買ってあげる」魔法が発動してしまったからだ。
「だからこんなのいらないっていってんの!」
「でも見てたじゃない!?チラッチラ見てたじゃない!」
「チラッと見ただけだろーが!ダメか?チラッともダメなのか!?」
リーリー判定は厳しい。いやでもさ、ネズミー的なところとか行ったことないから、耳付きグッズってちょっと気になんじゃん。見ちゃうじゃん。
「お前らあああ!!買うのか!?かわねぇのか!?あああん!?」
怒鳴り声に顔を向ければ、ファンシーな物を売っている露店に不釣り合いな、スキンヘッドのでかいおっさんが眉間に青筋を浮かべていた。
「すすすすみませんかいまあああす!!」
「よしよし」
リーリーと二人涙目で商品を買う。お金を渡すと、一転して笑顔になるおっさん。
俺たちは慌てて店を離れた。
「何あれ、絶対カタギじゃないよな」
「何いってんの。絶対カタギじゃないに決まってるでしょ」
ハアハアと息を切らし、手に持った動物耳の帽子を見つめる。
「せっかくだし被ってやるよ」
俺は黒い猫耳のついた帽子をかぶる。恥ずかしすぎる……
「ふふっ、可愛いところもあるのね」
「うるせえバーカ。俺が今何歳か知ってるか?100超えてんだよジジイだよ」
と、リーリーに目を向ければ、白いウサギ耳の帽子を被る彼女と目が合う。
「に、似合ってる、ぜ?」
「らしくないこと言わないの!」
「アテッ」
リーリーの手刀が飛んできた。
でも、なんかこれ、悪くないかも。デートみたいじゃね?
ってまさかな、無いわ。
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