第15話 学園祭!!

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「おっはよーございまーす!!」  窓から教室に入ると、ちょうど1時間目の授業が始まったところだった。  クラスメイトがギョッとして、俺のことを見ている。それからノアと目があった。  なんか言いたそうに、首を左右に振っている。 「ん?」 「ん"ん"っ」  聞き覚えのある咳払いの音。  やっべ。ウルシュラ先生の授業じゃね? 「リク、今が何時か知っているか?」 「アハ、アハハ……すみません遅刻しました」 「それから、ここが何階か知っているか?」 「すみませんちょっと身体強化魔法の練習で……」  よいしょ、と踵を返して外に逃げ出そうした俺の襟首を、ウルシュラが電光石火の勢いでむんずと掴んだ。 「ウグハッ、ぐびがあああ」 「逃すか!お前には色々聞きたいことがある!職員室へ来い!!」  ズルズルと引き摺られて行く俺に、ノアは哀れみのこもった目を向けてくる。 「今から自習だ!」  ウルシュラはそう言って、教室の引き戸を勢いよく閉めた。  職員室へ引きずり込まれた俺は、自分の椅子に踏ん反り返るウルシュラ先生を前に正座させられ、鋭い眼光で見下ろされる。  ほんとにボンテージとか鞭とか似合いそうな教師だ。怖っ。 「十日も寝込んでいたそうだな」 「らしいですね、はい」  俺もそれは昨日聞いた。そりゃ身体も鈍るわ。 「それで、学園が襲われた時、お前は侵入者と闘ったらしいじゃないか?」 「そ、そりゃあ悪い奴がいたらやっつけるって習いませんでした?顔がアンパンのヒーローに」 「わけのわからんことを言ってはぐらかすな!!」  ゲシっとピンヒールが、俺の肩に食い込む。 「イテッ!暴力反対っス!ってグリグリしないでお願いしまっす!」  クッソ、この女王様体質め!ドS!  ウルシュラ女王が足を下ろし、また俺を睨みつけてくる。 「真面目な話、お前は何者だ?」 「何者もないですって、」 「教師も生徒も殆どが眠らされていた。そんな中、お前とリーリーとジルバートだけは敵に立ち向かい、あまつさえその敵はお前の知り合いだったそうじゃないか」  やっぱバレるよな。源太とやりあった時、ほかのクラスメイトも見てたし。 「そして、学園の侵入者は皆、お前と同じ赤い目だったと生徒が言っている」  なんて言えばいいんだよ。つか、あの時この先生も職員室で寝ぼけてたクセに偉そうに。 「なんとか言ったらどうだ?」  ここで本当のことを言って、ああそうかお前も大変だな、とはならないだろう。ウルシュラはそんなに甘くない。  俺のことを知っても、普通に接してくれるリーリーやノア、ジルバート、マスターが特別なだけだ。俺はこの世界に来て、特別な相手と立て続けに出会ってしまった。  次も、なんて、そんな都合の良い話などない。これでも100年生きてきた吸血鬼だ。運と現実はわきまえているつもりだ。 「先生、本当は、」  と、覚悟を決めた俺を遮るように、職員室のドアが開いた。 「あら?どうしたのかしら、ウルシュラ先生」  優しげな声が、ウルシュラの名を呼んだ。ただ、呼ばれたウルシュラは、ビクッと体を揺らして顔を上げる。 「が、学園長……」  学園長!この学園で一番偉い人!  興味津々とそちらを見れば。  20代後半の若い女性が、優しげな、それでいて威圧的な笑顔でこっちを見ていた。  あれ?なんか思ってた学園長の感じじゃない。もっとおばあさんとか想像してたわ。 「あっれぇ?どうしたんだい、リク君」  学園長の後ろには、俺もよく知る優男が。 「マスター!」  あんまりな雰囲気だったから、マスターの優男な顔になんだか安心感が湧いた。
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