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「んじゃまた来ます!」
一通り見て回り、おばちゃんに手を振って店を出た。次はどうしようなんて考えるリーリーについて、俺はキョロキョロしながら歩く。
「あ、そうだ最近流行ってる飲み物があるんだった。行ってみる?」
「ん、任せる」
というわけで、リーリーとやって来たのはなにやら若い女の子が集まる屋台の前だ。
所でこの世界は、どうやら文明の利器があまりないようで、写真とか電子看板なんかが存在しない。そのせいか、店の看板は全て手書きだ。
その屋台の看板には、なにやらカップに入った大量の目玉のようなものが描かれている。
「これ、最近流行っててね、ターピオっいう飲み物なんだけど」
俺は驚いて、というか予想通りすぎて目玉が飛び出しそうになる。
「モチモチのつぶつぶが沢山入ってて美味しいんだよねー」
「あああああ異世界にもこんなもんが流行ってんのかチクショー!!」
「……どうしたの?」
要するに、この屋台で売っているものはあの集合体である。
日本でもめっちゃ流行ってる、あれである。
「おえ。俺こういう集合体ニガテ」
「ちょっと、本気で吐きそうな顔しないでよ!?」
「無理。キモい」
ガン、と足の甲を踏まれた。
……というのは、完全に余談である。
陽も陰り、そろそろ戻ろうかという事になった俺たちは、ギルド『隻眼の猫』の前まで帰ってきた。
「今日はまあ、楽しかった。ありがとう」
「なによ。別にあんたの為じゃなくて、マスターに頼まれたからなんだからね」
頬を膨らませて、リーリーが俺を睨み付ける。
「わかってるって」
「じゃあ、あたしはあっちだから」
あれ、リーリーもここに住んでるんじゃないのかと疑問が過ぎる。そういえば、そもそも他のギルドメンバーもどこにいるんだ?
「なに?」
「いや、どこに住んでるのか気になって」
「ああ、あたし、この街の学園の生徒だから、そこの寮に住んでんのよ。あー、明日からまた学校かあ」
なんだ、と?
「おい、その学園、魔法とか学べるのか?」
「そうだけど?」
キョトンとするリーリーなど気にせず、俺はガッツポーズでもって叫んだ。
「俺も学園に行きたい!!」
偶然近くを通った人が、ギョッとして俺を見てすぐに視線を反らせたけれど関係ない。
これはまさに、王道シチュ、定番の流れじゃあないか!!
「あんた、歳は?言っとくけど、学園には18歳までの人しか入れないからね」
「リーリーは幾つだ?」
そう問うと、リーリーはちょっとムッとした顔をする。
「……16だけど」
「じゃあ俺も設定16で」
「はあ?」
そりゃあ100年は吸血鬼として生きているわけだけど、見た目はさほど変わっていないはず!
「あんた、自分が16に見えるわけ?」
「ちょい、失礼だぞ。あ、もしかしてもっと上に見えてた?」
それはそれで許す。大人っぽいってことだろ?
「そんなわけないでしょ。あたしより下だと思ってた」
え?
「うっそだぁ?」
「いやガチで」
俺はこの世界に転生してから、一番のショックを受けたのでした。グスン。
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