第17話 森の妖精

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★  リーリーは客用に用意されたツリーハウスの寝室で、枕も何もない硬いベッドを蹴った。  爪先にビリビリと痛みが走り、多少気が散ったが、それでも怒りは収まらない。 「何よ!!リクはなんも悪い事してないのに!!」  もう一度、今度は拳を振り上げたところに、イリノアが部屋へ入ってきた。 「ごめん……」 「え、謝らないでくださいよ!イリノアさんが悪いわけじゃないのに」  リクが刺されて気を失った後、エルフの集落へと通されたリーリーだったが、そこでリクは何処かへ連れ去られてしまった。リーリーは集落の中央広間で、エルフの長と話す事が許されたため、先ほどまで話し合いをしていた。  いや、話し合いとは程遠かった。日が暮れるまでにエルフ達が発した言葉など、「ならん!」「だまれ!」「フン!」くらいだろうか。  実際にはそんな事はないのだが、リーリーの抱いた感想はそんな感じだ。 「こんな事になるなんて、思ってなかった」  イリノアは無表情な顔に、悲しみを滲ませている。 「だから、イリノアさんのせいじゃ、」 「長はわたしの父。その補佐をしているのは、わたしの母。間接的にだけど、わたしはリーリーとリクの邪魔をしてしまっている」  リーリーは言葉を飲み込んだ。リーリーはまさに、こちらの話を少しも聞かず、終始仏頂面をしていた長に対して怒っていたからだ。 「エルフは、代々自分より強いものを認める風習がある」  唐突にそんな事を言い出す。リーリーは意味がわからずに眉間にシワを寄せた。 「結婚も話し合いも、最後には、強いものが勝つ」 「あたしにエルフ族と戦えっていうんですか?」  沈黙は肯定か。リーリーはそう受け取り、溜息をこぼした。 「勝てるわけないですよね」 「……うん」  今度はイリノアも溜息を吐き出した。  それはそうと、だ。  リーリーにはもうひとつ、今の話で気になる事があった。 「イリノアさんがリクを必要以上に追いかけてるのって、もしかして」  とたんに顔を赤くするイリノア。つられたように、リーリーも頬が熱くなった。
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