第5話 学園へ!

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「ノアは先に逃げろ」 「え、でも」 「つか正直近くに居られると邪魔」 「言い方ヒドっ!?」  そんなの構ってられるか!俺100年は生きてきたけど、こんなクソでけえ犬初めて見たわ!! 「君だけ残していくなんて出来ないよ!」  いや、やめて、本当にやめて。そう言うのがフラグを形成していくんだぞ!?  犬野郎がノアを見た。グルルと唸る。  そりゃ俺よかノアの方がチビで弱そうだし、犬だってそれはわかるだろうし。だから逃げろって言ったのに。 「クソ、もし俺が死んだら化けて出てやるからな」  駆け出した犬と、ノアの間に立つ。俺は吸血鬼、人よか何倍も強い。でもさすがに、バカでかい犬と闘ったことはない。  向かってくる犬の顔面にグーパンチを繰り出す。しかし犬は速かった。グルンと首を回し、そのまま俺の腕に噛み付く。 「アイタタタタッ」  離せクソ!千切れる、千切れるから!! 「ウラァ!」  犬の鼻面を殴ると、腕を離した。良かった、まだ腕はくっついたままだ。  だが、犬は待ってはくれない。次には首を狙って突っ込んでくる。本能にまかせて、自然と急所を狙っているのだろう。俺は衝撃に備えて身構える。  と、犬は負傷した俺を飛び越えて、後ろの弱そうなノアへ向かって行った。急所を狙ったと見せかけた、見事なフェイントだ。 「ノア!」 「あわわわわわっ」  逃げろと言っても間に合わないだろうか。  ノアは顔面蒼白で尻餅をつく。情けないノアには期待できそうにないな。  俺は走った。瞬時にトップスピードで、犬に向かってーーー、  体当り!効果は抜群だ!  とはならない。 「ぐわぁ、クソッ」  もんどりうって地面に転がる。バカでかい犬も転がる。犬はすぐに体勢を立て直し、あろうことか俺の肩口にこれまたバカでかい前足を振り下ろした。  食い込む爪がハンパなく痛い。 「この、犬が!重っ!」  ガルルルと唸る口元からヨダレがダラダラ垂れていて、なんか臭い。 「いい加減に退けって!」  下半身を犬の胴体に巻き付け、捻り技を仕掛ける。そのまま前足を引き剥がし、太い首に腕を回す。 「うおおおおおお」  渾身の力技で首を捻った。  犬野郎が泡を吹いて暴れる。メキメキと音を立てて、犬野郎の首が折れた。  ドサリと倒れた犬は、先っちょからモワモワと黒い煙となり消える。 「はあ、はあ、はあ」  勝った、けど、キッツかったー。俺もうバカでかい犬とは闘いたくない。 「大丈夫!?」  駆け寄ってきたノアは、顔面蒼白で。 「大丈夫じゃねぇよバーカ」  なんて笑ってやれば、ノアは心底安堵したように笑顔を見せる。 「早く手当しないと」 「いいよこれくらい。ほっときゃ治る」 「でも、」  と言うノアの目の前で、犬に噛まれた傷が徐々に治っていく。 「え、ウソ……?」 「な、便利な身体だろ?」  身体を起こし、胡座をかいて座る俺を、ノアが驚愕の表情で見守っている。なんだか気恥ずかしい。 「リクくんは魔法が使えない落ちこぼれなんじゃないの?」 「言い方!言い方がキツすぎる!」  まあでも確かに不思議だよな。俺だって不思議だもん。 「まあ、吸血鬼なんてみんなこんなもんさ」  そう、俺吸血鬼だから。色々不思議があるんだよ。 「……吸血鬼?」  あ。 「いやー、俺吸血鬼だったらいいなあ、なんて」 「リクくん、吸血鬼なの!?」  あちゃー。やっちゃった。 「あははは」 「ホントに?だから赤い眼をしてるんだね?凄いや!ねぇ、ほかに何が出来るの?空飛ぶとか?コウモリに変身できる?にんにく、キライ?」 「うるせーよ……」  なんだかとっても面倒なヤツにバレてしまった気がする。  尚も質問を続けるノアに、俺は乾いた笑いを漏らした。
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