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俺はさっき確かに死んだ。
動く死体、墓から蘇った死人なんて言われているけど、吸血鬼だって生きている。痛いとは思うわけだから、これは生きているうちにはいるだろうと俺は思う。
それに生きているから弱点があるわけで、俺は確かにその弱点を文字通り突かれて、死んだ。
「よな?俺死んだよな?」
首を傾げて身体を起こす。そこは満点の星空が綺麗な荒野だった。とりあえず胡座をかいて座り、もう一度首を傾げる。
「どこ?」
六畳一間のボロいアパートはどこだ?
どこまでも続くデコボコした荒野には穏やかな風が吹いていて、やっぱりここは室内ではない。もっと言うと日本か、ここ?
「わからん。まあ、いいさ。俺は無敵の吸血鬼。今更何が起こっても怖くなんかないさ」
態々口に出して言うのだ、察してほしい。それに死んだのは確かだから無敵でもない。
とりあえずここが何処か知るために、俺はトボトボと歩き出す。
「飛んだりできたら楽なのになあ」
コウモリになったりなんかして、空を飛べたらこんな荒野もひとっ飛び出来るのに。
かなりの距離を歩いた頃、前方に明かりが見えてきた。現代日本のギラついた明かりではなく、なんだかファンタジー映画のような柔らかい幻想的な光だ。
明かりがあるならば街があるのだろう。俺はそこへ向かってさらに進む。
一際高い丘の上。そこから眺める明かりは、やはり街のもので。
「ファンタジーだ!!」
俺は嬉しくて叫ぶ。まるでファンタジー。石造りの建物。自動車ではなく、人々の活気に満ちた声。
あのネトゲオタの白豚が見たらさぞ喜ぶだろうなあ。
駆け出した俺は、小石につまづいて転んだ。
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