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「テオせんぱーい」
向かったのは学園の端の研究室。いったいどんな理由をつけているかは知らないが、テオはこの研究室を私物化している。
「テオせんぱーい?」
返事はない。仕方ない、勝手に開けてやる。
ドアノブを握る。瞬間、バチチ、と激しい閃光が走り、俺の身体を電撃が駆け抜けた。手から煙が上がり、不快な焦げ臭さが充満する。
「アタタタタ!!おい、こら!!トラップかけてんじゃねえよ!?」
今の絶対俺じゃなかったら死んでた!
慌てる俺を他所に、ドア越しにテオのくぐもった声が聞こえてくる。
「もー、なに?夏休みだよ、静かにしてよ」
「任務だから!学生の夏休みは任務のためにあるんだから!」
「ああ、マスターか。大丈夫だよリク君。それウソだから。人手不足の言い訳だから」
ほらみろやっぱりそうじゃん!?マスターのウソつき!!
とは言えだ、俺の手元には間違いなく依頼書があるわけで。
「俺は高級学食の為に頑張るってきめたからな!お前も来い!」
「もー君ウザいよ……あ、そう言えば僕、ギルド対抗戦の報酬もらってないんだった」
ん?報酬?たしかそれって……
「いいよ。一緒に任務行ってあげる……その間君を好きにできるし」
「聞こえてるぞコラ!俺はモノじゃねえ!」
帰ったらリーリーコロス。俺は心に決めた。
無事に帰れたら、だけど。
「さ、面倒はさっさと終わらせよう。で?依頼の内容は?」
テオが部屋から顔を出した。その顔に、依頼書を突きつける。
「知らん!なんて書いてんだ?」
「君さぁ、ほんと、バカだよね」
「うっさい先輩!んで、なんて書いてんの?」
依頼書をしばらく見つめていたテオ先輩が、ふうと溜息をついた。
「そういやもうそんな季節か」
「ん?」
先輩がどこか遠くをみるような顔をする。なんか意外な表情だ。割れた眼鏡の奥の灰色の瞳が、こころなしか翳っているような気もする。
「ま、君には着いてから詳しく説明するとして」
テオは深く息を吐き出し、言った。
「獣人村へ、レッツゴー」
「お、おー!って獣人!?」
それはまさか、可愛らしいケモミミのパラダイスの事か!?
オタクの至高!ケモミミ!!
俄然やる気が湧いて来た!!
「先輩!早く、早く行こう!」
自然ニヘェと笑顔が溢れる。変態とか言うなよ!!
「あー、なんか勘違いしてるっぽいけど、まあいいや」
そんなテオの呟きは、もはや俺の耳には届いていない。
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