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ピエロ面が去った翌朝。
俺は痛む腹の怪我を庇いながら、村長ティアナの元に馳せ参じた。怪我自体はもうほとんど塞がってはいるけど、毎度のことながら痛みはなかなか引かない。
本当はもう少し寝て痛かった。でも、村長の呼び出しがびっくりするくらいに強かった。
「もう、なんだよもう。そっとしといてよ」
「まあまあ、僕の姉でもあるんだ、勘弁してくれよな」
おい、言ってること矛盾してるぞテオ先輩。
村長に呼び出された広場に辿り着く。昨日の騒ぎで散らばった祭壇の破片は、もうすでにキレイに片付いていた。
「待っていたぞ!さあ、こっちへ来るのじゃ」
ティアナに手招きされ、そちらへ向かう。獣人たちもみんな集まっているようだ。
「我らの大事なクリスタルが奪われた悲しみは大きい」
ティアナが厳かな声で話し出す。
「あのクリスタルは大事な友らとの繋がりでもあった。それがなくなるとは、まさか思ってもいなかったのう」
また、誰かが泣き出す声が聞こえる。
「しかし、我らの願いは叶ったのじゃ」
ん?なんか話しの流れおかしくね?
「見よ、ここにおられるお方は、我らが待ち望んだ存在!吸血鬼様じゃ!」
「っておいこらなんでや?」
「む、だってクリスタルなくなったんじゃもん。代わりのものがいるであろうが」
おいいいい!!だからってこんな、こんなみんなの前で何言ってんの村長!?
「きゅ、吸血鬼ってまさか、冗談だろ」
「いやでも、昨日の闘いはすごかった」
「それに普通なら死んでるような怪我しておいて、もうピンピンしてるぞ」
ピンピンはしてない。めっちゃ痛いの我慢してるから。
「皆、クリスタルがなくとも、我らの吸血鬼様に対する思いはかわらんじゃろ?だから、悲しむのはやめよ!我らの願いは通じたのじゃ!」
ウオオオオオと広場いっぱいに響く雄叫び。
俺はなんとかしてくれとテオ先輩に目を向けるも、興味なさげに自分の爪を眺める先輩がいた。
「よーし宴だ!」
「吸血鬼様が現れた!めでたいぞ!」
「酒をもってこーい!!」
わらわらと準備に取り掛かり始める彼らを、ティアナが愛おしげに見つめている。
「どうじゃ、単純で可愛かろう、吸血鬼どの?」
「いや、まあそうデスネ」
やってきたリビアが嬉しそうに俺の手を引く。
「リク!何してんの?みんな待ってるよ!?」
ああ、もう帰りたい。
されるがままに獣人たちの輪に入る。
もう、酒は勘弁してくれ。
なんて誰も俺の声なんか聞きゃしない。
まあいいか。
たまにはこんなチヤホヤされんのも、悪く無いかな、なんて。
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