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第17話 森の妖精
アメルンとベルクレールがグルネラ山脈の麓で共同戦線を行った。その情報は早くも国中に広まり、アメルンの王都はその話題で持ちきりだった。
例えばそこの立ち飲み屋で男二人が言うには、
「ベルクレールには誇りもクソもないな。あんな手酷く戦争で負けておいて」
「ああまったくだ。敗戦国が調子に乗りやがって」
随分と批判的だ。表向きは友好国と聞いていたが、俺の勘違いか?
さらに進んだ先で井戸端会議を開く奥様たちは、
「ベルクレールにはステキな陶磁器が多いのよね」
「今回の件で、また関税が下がればいい品が手に入るかも知れないわね」
なんて平和な。まあ、陶磁器は興味ないしどうでもいいか。
そのすぐ近くのカフェでは、若者が熱く語っている。
「やっぱ『黄金の獅子』は最強のギルドだよな!」
「だな!今回、グルネラ山脈のスノードラゴンを倒したらしいぜ!」
「いやいや、アメルンの『銀の流星』もすごいじゃない?アリサ様、若くて美しくて強いし!」
「女の憧れよね!!」
おいコラァ!!スノードラゴン倒したのはこの俺!!それからジェイは文句ばっか言いやがるクソで、アリサは偉そうに踏ん反り返ったバカ女だったっちゅーの!!
「ちょ、あんた、なにひとりで暴れてんの?さっきから挙動不審すぎてあたしが恥ずかしいんだけど!!」
「ぐ、ぐるじぃ、ぐびを、じめるな……」
オエッ、リーリーめ!真剣に人の首をしめるやつがあるか!
フン、と鼻を鳴らすリーリーに、俺は小声で呟いた。
「クソが!そのタピーオ喉に詰まらせてしまえ」
「聞こえとるわ!!」
タピーオを持っていない方の手を、リーリーがまた俺の首に伸ばしてくる。
おっと、また首をしめる気だな!!そう何度も同じ手を食らうかっての!!
「ブフッ!!」
「バカめ!あんたが避けるのはわかってんのよ!」
勢いよく頭を下げたら、リーリーの膝蹴りが顔面にぶち当たった。
「鼻が折れました!!」
「良かったわね、いい感じじゃない?」
辛辣!!
「な、なあ、俺今回ちょっと頑張ったんだけど」
「だからなに?」
鼻をごきっと鳴らして元の形に戻しながら、俺はリーリー様のご機嫌を伺う。
リーリー様はさっき買ったタピーオを美味しそうに飲んでいる。もちろん俺にはなにも買ってくれない。
「いや、何っていうか」
スノードラゴン倒したんだけど。あれそんなにたいしたことなかったのか?
思えばあれから一週間経つが、褒めてくれたのはティアナだけだった。
王都へ来てみれば、いつのまにか手柄はジェイとアリサのものになっているじゃないですか。
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