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第6話 学園内ギルド対抗戦
学園には、希望者が使用できる寮がある。学園の維持費は、国が全て負担している。よって学費は殆どかからない。強いて言えば、食堂でいい飯を食いたいなら自分で出すくらいだ。
その学園の維持費の元手は、ギルドが国へ支払っている依頼料の3割だ。
将来有望なギルド団員を育てる為の学園運営を、国庫がまかない、その元はギルド、さらには依頼主が担う。
中々に上手いこと回っている制度だ。
編入と共に、俺もこの寮へ入った。
別に意識高い系の選択ではなく、マスターにギルドの二階を追い出されたからである。「もうお客さんじゃないんだし、出てってくれるかな?」と、やんわり捨てられたのだ。
そんなわけで、俺は今学園内に建つ寮に住んでいる。
寮は二人一部屋。俺の同居人は、水色の髪のチビだ。
「それでね、吸血鬼の伝説はいっぱいあって、これなんかとっても面白いんだよ!吸血鬼の王子様とエルフの庶民の女の子が恋に落ちる話で、最初はエルフの女の子は吸血鬼の王子様のことがキライなんだけど、」
〈ヘルハウンド〉とかいうバカでかい犬と闘った次の日、俺は新たな敵と相対している。
「ある時エルフの女の子が魔物に襲われたんだよ。そこに吸血鬼の王子様がやってきて、魔物を目からビームを出して倒しちゃったんだ!それから、」
早朝、爽やかな朝日が窓から差し込み、俺はいい気分で目を覚ました。
しかしいい気分はそこで終わり。
「ねぇ、聞いてる?」
「うるさい!聞いてない!」
「ヒドイ!いい話なんだよ!?君のご先祖様の話なんだよ!!」
「そりゃ絶対に違うね。俺は目からビームなんて出せないもんね」
俺が吸血鬼だと知ってしまったノアは、とんでもない吸血鬼オタクだった。今まで知りもしなかったが、吸血鬼に関する本をいくつも部屋に溜め込んでいて、それを何故か俺に語って聞かせようと言うのだ。
「えー、目からビーム出せないの?カッコいいのに」
「カッコいい!?どこが!?」
普通に恐ろしいわ!!
「じゃあ君何ができるの?」
つまんなーいといった顔のノア。
俺はひとつ伸びをして、学園の制服に着替える。ちなみに〈ヘルハウンド〉との戦闘で破れた所は、リーリーに頼んで直してもらった。
リーリーはギョッとしながらも、修復魔法を使って一瞬で元に戻し、「何があったかは聞かないけど貸し1ね」と言って溜息を吐いていた。
「何ができるってほどなんもねぇよ。まあちょいと身体能力が高いのと、人よか寿命が長いのと、殆ど不死身なのと、あとは風邪をひかない」
「なにそれ。面白くない」
「おい!風邪を引かないのはいいことだぜ」
「地味」
地味で悪かったな!?
「まあいいや。朝ごはん行こー」
ノアは急に冷めた顔をして、部屋を出て行ってしまった。
「なんなのアイツ。しんど」
はあ、と自然に溜息が出る。
それから準備を終えて、少し遅れて俺も部屋を出た。
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