第10話 獣人族の宴

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第10話 獣人族の宴

 夏休み!!  俺が太陽の下で初めて迎える夏休み!!  クリスティエラ第一魔法学園にも、夏休みがやってきた!! 「何いってんのさ。リク君は依頼こなしてもらわないと」  無慈悲な事を言うのはどこのどいつだ?  ああ、そうだ、ここはギルドだ。そんな無慈悲な事を言うのはマスターしかいない。  今日から夏休みという日の朝。俺はリーリーに連れられて、ギルドへやって来ていた。  浮かれる俺とは正反対の、冷たい態度のマスターが、依頼の書かれた紙を数枚突きつけてくる。 「ギルド所属の学生の夏休みは、依頼のためにあるんだよ?知らなかったの?」 「そーんーなーぁ」  項垂れる俺に、マスターはさらに無慈悲な事を言う。 「というわけで、テオと二人で行って来て」  えー、あのサイコパス先輩とかよ。 「いいね!ほら、テオ先輩なら、あんたの魔法についてなんかわかってんじゃない?」 「ヤダよ俺あの人キライ」 「子どもか!」  ダンダンと地団駄を踏む俺に、リーリーが手刀を打ち込んでくる。それを軽く避ける。 「イダッ」 「なめんなコラ!!」  まさかの追撃が……やるな。 「それに君、お金欲しくないの?」 「ん、確かに。俺もたまには高級学食が食べたい」 「だったら行って来てよ。簡単な任務だよ?」  と言って押し付けられる依頼書。  簡単、か。ならまあ、いいか。 「でも別に俺が行かなくてもいいんじゃね?他にもギルドメンバーいるだろ」  最後のダメ押しで聞いてみると、なにやらマスターとリーリーの表情が曇った。 「いるにはいるんだけどね」 「なんだよ?」 「なんかみんな個性的すぎてさ。ほとんどギルドにいないんだよねぇ」  おい!ってことはこれは人手不足のせいか!つかこのギルド大丈夫か? 「というわけで頼んだよ!」 「なんか納得いかねぇ」  ぶつぶつ言いつつギルドを出る俺、良い子。  渋々、あくまで渋々だが、俺は初の依頼をこなす為、テオ先輩のもとへ向かうことになった。  ちなみにリーリーはマスターとお茶をするのが任務だそうだ。  こいつは気付いてないだろうが、俺はリーリーがマスターにお小遣いをもらっているのを知っている。最近気付いた。まったく、ちゃっかりした王女様だぜ。
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