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第12話 包囲された学園
その日、学園は敷地内を完全に包囲された。
数時間前。
朝はいつもと同じように、俺はノアと食堂に行った。途中リーリーと合流。
3人で朝食。俺とリーリーはいつもの質素なもの。ノアは朝から肉、肉、肉。こんだけ食ってなんでこんなチビなんだコイツ。
ちなみに、獣人族に貰った貴金属を売った金は遠に消えた。なぜだ?
「今日の授業は座学ばかりね」
「だね。僕はそれでも良いけど」
「身体動かす授業の方が好きなのよ」
と、リーリーがため息をつく。
「あんたは何でも楽しそうよね」
グハッ、俺のことガキ扱いする顔!
「悪かったな。まあでも、たしかにこんな充実した時間って初めてかも」
「そういや、100年生きてるんだっけ?」
うんざりした顔!リーリーよ、俺にも笑顔をくれ!!
「まあな」
「何してたの?」
「んー、最近はずっと部屋に篭ってたかな。ネトゲとかしてさー、ご飯はスマホで注文すりゃ届くしな」
ポカンとしたリーリーが首を傾げている。ノアも不思議そうな表情を浮かべている。
そうだった。異世界の事は言ってないんだった。
「ま、なんだ。退屈してたのさ」
「へー。他には?」
と言われて、少し悩む。
14歳で死ぬ事を自覚していて、まさかの展開で人であることを捨てて。それまでに出来なかった事が出来る代わりに、太陽の下には出られなくなって、歳も取らなくなった。
「あー、そういや、俺もちょっとヤンチャした時期もあったなあ」
「ヤンチャ?」
「そ。俺のいた国はさ、でっかい戦争してたんだよね。もう空からめちゃくちゃ爆弾が降ってくるわけよ」
「何それこわい」
正しくは焼夷弾だけど、まあ、細かいとこはいいや。
「それで、街は焼けてくなかで、金持ちはどっか山間の村とかに避難しててさ。俺は仲間とそういう家に忍び込んではちょっとだけ拝借して遊んでた」
我ながらクズだ。今ならそんなこと絶対しない。まあでも、国中が貧困に喘いでて、その日食べるものもない人がいっぱいいた。みんなが頑張るぞーってやってる中、持ってるやつらはみんな、普通の生活してたから。
まあ、俺たちみたいクズに目をつけられるわけだ。
食べ物じゃなくても、他に色々役に立つものもあったしな。
「あんたほんと、ずっとクズなのね」
「自覚してるからそんなにイジメないで」
それにしても、と、リーリーは続ける。
「あんたにもそんな友達がいたのね」
安心したわと、溜息をつく。
まあね、俺にだってその時々の付き合いはあったさ。
みんな何してんのかな?死んだかな?
まあ、どっちにしろもう会う事も無いだろうな。
「そろそろ行こっか」
「そうだねー」
俺たちは無駄話をやめて、残りの朝食を掻き込むと、教室へと移動した。
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