第1章 隣国の王族

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王族同士、仲が良いとは言いがたい。むしろ、悪いといっても差し支えないだろう。 王位継承権の争いがあるのだから尚更だ。 「俺に対しての無礼はいい。だけど、彼女に対してはやめてくれ。何もしてないだろうな?」 レグルスは比較的穏やかな口調だが、目付きが険しくなっている。 色違いの双眸は刺すような冷たさでシリウス(おとうと)を睨む。 「兄貴のモノなら、奪い取っても良いだろ」 シリウスもシリウスで、レグルス(あに)のことなど何とも思っていないかのように振る舞う。 火種があれば爆発しかねない状態だ。 「シリウスさま」 アルテミスは腹をくくり、自分の身分を明かすことにした。 「アリスと名乗りましたが、私の本当の名はアルテミス・ロータス・ローランド。ソレイユ王国の傍系王族です」 「なにそれ、冗談にしては笑えないんだけど。傍系王族がメイド服とか罰ゲームかよ」 だが、シリウスは鼻で笑い相手にしなかった。 傍系王族と言えば公爵クラスの地位を与えられ、悠々自適に生活しているイメージが強い。 アルテミスのようにわざわざ使用人のようなことをする王族は、まずいないだろう。 「嘘じゃない。彼女はアポロンの妹だ。お前も会っただろう」 レグルスが口を挟む。 アポロンが留学していた時に、彼はシリウスにも会っているらしい。 その名前を聞いてシリウスは舌打ちをした。 どうやら、アポロンとの間に何かあったらしい。
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