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不思議な夢の続きは
大上段に構えた大剣の腹には『かわいい!』と唯一無二の正義の言葉が刻まれ、光る白銀の鎧には『好き』という鉄壁の護文が刻まれている。幾多の敵を屠り、幾多の敵を退けてきた。この剣と鎧がある限り、女騎士は負け知らず。
無敵の自信をマント変わりに纏う女騎士の眼前には、長身痩躯テンガロンハットの黒衣のガンマン。その距離は十メートルばかり。
ガンマンの幽鬼のような青白い顔に浮かぶは不適な笑み。線と見まごうばかりの目と口は不気味につり上がり。
ガンマンは左腰のホルスターから神速で銃を抜く。
左手で腰だめにされた銃は、月の光も届かぬ漆黒のリボルバー。銃身長く、狙いはぶれず。
「いつでもいいぜ、女騎士さんよお」
ガンマンの言葉など待つ身もない。
「はあああっ!」
猛る叫びは蹴り足の熱となり、女騎士を疾風迅雷の一条と化す。
ガンマンの右手が撃鉄に添えられるやいなや、これまた神速で弾かれる。
ダダダダダダッと連音響かせ撃ち出される弾丸。
女騎士は止まらない。胸前で大剣の腹を正面に構えなおす。
正確に吸い込まれる弾丸。カカカカカカッと弾かれ闇夜に消えていく。
その距離三メートル。
女騎士のヒュッと一息に乗せて突き出される大剣。ガンマンの胸元に死を運ぶ。
獲った!
ガキンッ! こだまする音と火花が女騎士の確信を打ち砕く。
切っ先を受け止めるは、いつの間にか右手に握られる深紅のリボルバー。ガンマンが流すはずの血よりもなお濃く。
幅広の銃身根元と切っ先がギリッと歯噛みする。
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