バカなのは

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ベッドに崩れ落ちて、鈴木は最悪だと唸っていた。 せっかく人が我慢してやってんのに、何してくれてんだ佐藤のバカ。 鈴木は唸る。 鈴木はゲイだから、別に佐藤と付き合うのは構わない。 だけど佐藤は、違う。佐藤が快楽に負けて、男に走るのはまずいと思っている。 鈴木は、けっこうかなり、佐藤に本気だった。 一方佐藤は、鈴木が逃げたのを知って落ち込んでいた。 とぼとぼと学校を後にする。 ゲイならいいじゃん。俺と付き合ってもいいじゃん。 そんなことをぶつぶつ呟きながら歩く。 佐藤は鈴木が思うより、単純でバカだった。 だから、まっすぐ鈴木のうちにやって来た。 ドアをドンドン叩いて、部屋に上がり込む。 「「………」」 無言で、鈴木はベッドの上で胡座をかき、佐藤は床に胡座をかいて見つめあった。 「俺は、鈴木が好きだ」 「………」 「良くわかんねえけど、俺は鈴木とちゅうするとスゲー気持ち良くなる!」 「佐藤は快楽に弱いから」 「そ、うかもしんないけど!里花ちゃんとちゅうしてもあんなに気持ち良くなかった」 鈴木は、ん?と眉を寄せた。 「鈴木とちゅうするとふわふわしてたまんなくなる!か、快楽に弱くて悪かったな!」 ちょっと赤い顔でわめく佐藤に、鈴木は首をひねった。 「なに佐藤、快楽に弱いんじゃなくて…オレのキスに弱いの?」 「? 良くわかんねえ。でも里花ちゃんとのちゅうじゃ勃たなかったよ俺」 鈴木は首を右に左に揺らし、しばし考えた。 考えて、結論を出した。 「佐藤」 「何、鈴木」 「バカはオレだった。こんなことならローション買っとけばよかった。とりあえずマーガリンとオリーブオイルとベビーローション。どれがいい?」 「は?」 「痛いのヤだろ?付き合い記念にとびきり優しく抱いてやる」 「はあ?」 「オレ、お前よりお前のこと好きだから。むしろ愛してる」 わけがわかんないながらも、佐藤は鈴木が自分のものになったのを知った。 そして、鈴木の言うように、自分は快楽に弱いと思い知らされた。 佐藤は少し思う。こんなに気持ち良くなるなんて、自分は淫乱なのかも。 ちょっとだけ今後が心配になったけど、幸せだからまあいいや。と思った。 佐藤は単純で、でも鈴木のことは大好きだったから、別に淫乱でもいいやと笑った。 鈴木は佐藤は、やっぱり快楽に弱いと思う。 だけどそれが、自分限定で弱いと気付いて、なら構わないと思った。 どのみちノーマルの佐藤だ。快楽に溺れさせた方がいいとも思い出してる。 鈴木は、自分が佐藤を手放す気がないと知っていた。 自分がちょっと変で、執着心が強いのも知っていたから、少しだけ佐藤が可哀想だと思った…が。佐藤が幸せそうに笑ったので、良しとした。 「ダーリン愛してる」 「ハニー…俺も」 終 2011/6/21
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