ひとつのアイス

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「んで、何でアイス一個?」 「え? デートだから?」 放課後、鈴木と一緒にゲーセンデートをしてからみんなと別れ、今は二人きり。 コンビニで買った棒アイスを、駐車場の所で食う。 「鈴木こっちから食って、俺こっちからな」 冷めた視線を寄越す鈴木に、俺は遠くを見た。 「だって金ねえもん俺」 ぽそりと告げたら、鈴木に頭のてっぺんのイチゴを摘ままれた。 「変なやつ」 手にしていた棒アイスに、鈴木がかじりついた。 俺は機嫌良くにっこり笑った。 「うまいよなこれ!」 「や…微妙」 「まぢで! もう食うな」 「食うよ」 ちょうど俺がアイスをかじってるときに、鈴木もかじりついてきた。 「食えなくはないし」 「…ムリして食われたくないんだけど」 すぐ目の前にある鈴木の唇が、赤い。 てか、近すぎ。 アイスを鈴木から遠ざけるために反対を向いた。 「それ当たりクジついてんの?」 「もち! 俺いつもハズレだけどな」 振り返って答えた俺に、鈴木はふうんとアイスを見つめた。 「それもハズレ予想?」 「当たってくれ!」 「じゃあ佐藤当たりでオレがハズレ予想な」 負けたほうが勝ったほうの言うことひとつ聞くことになった。 そんで、アイスの棒には何も書かれていなかった。 「まぢ?」 「まぢ」 コンビニの裏手で、壁を背にして立つ俺。そんな俺に覆い被さる鈴木。 「まぢ?」 「しつけえ」 触れた唇に、思わず目を閉じた。 歯列を割って入ってきた舌に、俺はピクリと反応した。ベロチューとか…聞いてねえし。 くちゅくちゅと、鈴木は俺の口んなかをたっぷり味わってから離れた。 唾液が糸を引いて…俺は片手で口許を覆った。 「鈴木、イヤらしい」 「佐藤もイヤらしい」 ちょっと気持ち良かった。 「じゃあ帰るわ」 地面に置いてた鞄を拾い上げ、鈴木が言う。 「あ? ああ、送る」 俺も鞄を拾い上げた。 「なんで?」 「…デートだから?」 「何で?」 「愛車で」 チャリの後ろに乗った鈴木。 普通に腰に腕、回さなくない?
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