ひとつのアイス

1/4
439人が本棚に入れています
本棚に追加
/22ページ

ひとつのアイス

佐藤くん(ちょっと単純) 脱色しながら漫画を読んでいたら、やり過ぎた。 ギシギシする髪を、前髪だけてっぺんで結ぶ。妹の赤い、イチゴのおもちゃのついたゴムが金髪の髪に映えるのに笑った。 俺、佐藤海斗(サトウ カイト)高校2年生。 身長172で、トレードマークは頭のてっぺんで結んだ髪。かな? ぺちゃんこの学生カバンには、筆箱が入ってる。 「行ってきまあす!」 築15年くらいたつわが家の玄関で叫んで、俺はチャリに鍵を差した。 新しいクラスでは、1年の頃からつるんでる奴らと、けっこう騒がしく過ごしてる。 エロ本片手にバカ笑いしながら、この胸がいい!なんて話しに盛り上がる、健康的な男子高校生。 毎日ゆるく、楽しく過ごしてた。 「痛…」 連れに投げつけたエロ本が、ちょうど教室に入ってきた鈴木に当たった。 「あ!わりい鈴木、大丈夫か?」 ノーコンと詰られながら、机の上から下りて鈴木のもとに行く。 「気をつけろよ」 エロ本を拾い上げ、パラパラと中を流し見ながら言われて、俺はあははと頭をかいた。 「鈴木も見る?」 にっこり聞いたら、にっこり返された。 「見ねえし」 鈴木は脱色していない少し長めの黒髪をかきあげて、俺にエロ本を差し出した。 俺は鈴木をまじまじと見る。 「鈴木、こういうの嫌い?」 「写真より本物が好き」 「うわあ…鈴木イヤらしい」 ニヤリと笑ったら、ニヤリと返された。 「お前もな」 うわあ。 鈴木面白い。 「放課後一緒に遊ばね?」 「デートの誘いか?」 「むしろ俺と付き合って下さい」 鈴木の手を握り告白したら、連れたちが爆笑していた。 「鈴木逃げて!」 「喰われちゃうよ!」 鈴木も笑いながら連れたちに応えた。 「むしろオレが喰う」 ギャハハと品のない笑い声が教室に響いた。
/22ページ

最初のコメントを投稿しよう!