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バカなのは
夏休みの間、佐藤と相田は友達付き合いを続けていた。
鈴木は周に二、三回ペースで泊まりに来る佐藤に、たまに一人Hを見せてもらって楽しく過ごしていた。
三人で海に行ったり、プールに行ったり、買い物に出かけたり。
季節は秋。
彼らの通う高校は、学祭の準備に余念がない。
今日も彼らは、三人で屋上。
仲良く菓子パンを食べている。
「相田のクラスお化け屋敷とかって、超怖いよ~」
「相田が普通に立ってるだけでいいだろそれ。暗闇の中、ただたたずむ相田」
「何それスゲー怖い!」
「てめえらっ、」
「バカにしてないよ」
「むしろ誉めてる」
真顔の二人に相田はそっぽを向く。
すでに佐藤と鈴木の態度に、相田は自分のポジションが薄々わかってきていた。
「俺はオモチャじゃねえっ」
「玩具にもならないヘタレの相田、牛乳取ってくれ」
鈴木の言葉に、相田は眉を寄せてしかし牛乳パックを渡す。
佐藤と相田、二人の共通する唯一の想い。
鈴木を怒らせない。
相田は鈴木の部屋にテレビを持ち込んで逆鱗にふれた時に思い、佐藤は一人Hする自分を見て一人Hする鈴木に近づいて逆鱗に触れた時に思った。
しかも、鈴木の怒りポイントが掴みにくいのが、また怖い。
佐藤と相田は、夏休みの間に学習した。
鈴木の毒舌は寿命を縮める。奴は確信的独裁者だ、と。
しかし鈴木にも言い分はあった。
何故人の部屋にテレビを持ち込むのか。何故一人Hしてる自分に近づくのか、と。
鈴木は雑誌よりテレビより、生で見るのが好きなだけの、ただの高校生だった。
「お前らのクラス、」
「喫茶店!」
「スタンダードな喫茶店」
「女子いないからただの喫茶店!」
「メイドも執事もいないただの喫茶店」
「「だからサボる」」
息がぴったりの二人に、相田はちょっと嫉妬する。
しかしそれは佐藤と鈴木の仲にではなく、自分が違うクラスな事に対して。相田は少しだけ哀しくなった。
「オレは相田のお化けを見に行く。ただ佇む相田をただじっくりと観察する」
「何それ面白そう!でも俺は行かない!何故ならお化け嫌いだから!」
相田が凹んで教室に戻るのを、二人は見送った。
「相田、打たれ弱いな」
「鈴木がいぢめるからだろ?」
「佐藤が止め刺しただろ?」
「え、俺知らない」
「オレは遊んでやっただけだ」
「相田友達いないからな」
佐藤の言葉に、鈴木は思う。
佐藤、お前友達じゃねえの?と。
言わずに、佐藤にちゅ、とキスをしてみた鈴木。佐藤はすぐに口を開いてディープをねだる。
数えきれないほどキスをしている二人だが、別に付き合ってるわけではない。
佐藤は鈴木が好きだった。けっこう。かなり。好きだと思ってる。
鈴木も佐藤が好きだった。けっこう。ヤバいくらい。好きだと思ってる。
「俺鈴木が好き」
「オレも佐藤好き」
しかしそれだけ。
二人は微妙な位置でただキスをするだけ。
佐藤は鈴木が自分のものになったらいいなあ…なんて思っているが、鈴木は佐藤を自分のものにしたいとは思っていない。
鈴木は、このままだらだらと高校を卒業して、働いてるうちに佐藤を忘れようと思っている。
だから、キスしかしない。
それが佐藤には物足りなくて、嫌なことだった。
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