その服、めっちゃ可愛い

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 そんなことを考えながら歩いていた時のことだった。  突然、ショップ袋を提げた方の手首をがしっと掴まれて、思わず足が止まって前につんのめる。  何事かと慌てて振り向けば、そこにいたのは背の高い綺麗な女性だった。 「あのー、すみません。その服、どこで買ったんですか?」 「へっ……」 「その、今あなたが着てる黄色のブラウス。めっちゃ可愛い。どこで買ったんですか?」  その女性は切れ長の目で真っ直ぐに私を見ながら、もう一度尋ねた。はあ、と怪訝な声を上げても、彼女は表情一つ変えない。  何かと思えば、この服をどこで買ったのか、なんて。  私だって通りすがりの人が着ている服を見て「あ、あれ可愛い」と思うことはあるけれど、直接本人に話しかける勇気なんてない。そもそも、話しかけようと思ったことすらない。  しかし、今私に話しかけてきた彼女は、迷いなんて一つもない目をして私を見据えている。それどころか、催促するように私の手首を握る力を強くした。  この人、細身なくせに案外力が強い。 「え、と……これは、そこの路地曲がった先の、ヴェリテってお店で……」 「そっか。そのスカートは?」 「あ、これも同じところで……」 「ふーん。今持ってる紙袋のお店ですか?」 「あ、そうです」  顔色一つ変えずに尋ねてくる女性に、私は戸惑いながらも答えた。  少しウェーブのかかったさらさらのロングヘアに、カジュアルなワークキャップ。トップスはこれまたカジュアルなTシャツ一枚だが、それが下に履いている大花柄のスカートを引き立てている。  パッと見た感じだけでも、おしゃれな人だな、と思った。 「教えてくれてありがとう。ねえ、今ヒマですか?」 「えっ……ま、まあ、一人なので、ヒマと言えばヒマ、なのかな……?」 「それじゃ、一緒にランチしません? 教えてもらったお礼に奢りますから」  ね、と小首を傾げる仕草が可愛らしい。  こんな風にいきなり話しかけられて驚いたし、訝しむ気持ちは消えたわけではないけれど、悪い人ではなさそうだ。  どうせ一人でランチをする予定だったし、たまにはこんなイレギュラーな日があっても悪くない。私も、彼女が着ているスカートをどこで買ったのか教えてもらいたいし。  いいですよ、と頷くと、彼女はようやく表情を変えた。  にっこりと笑うその綺麗な顔を見たら、なぜだか妙にどきどきして、「こっちです」と私の手を引く彼女の背中を無言で追いかけた。
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