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「……ずるいっすよ、恭子さん」
「えっ」
「ずるい。そんな健気なこと言われたら、とにかくイかせようとしてた俺がバカみたいじゃん」
「そっ、そんなことは思ってないけど」
「あ、やばい。自分が情けなさすぎてちょっと萎えた……一回抜くね」
そう言って杏介くんは、なんだかしょんぼりした様子で本当に自身を抜き去ってしまった。
それから私の隣にぼすっと勢いよく横たわると、目をぱちくりさせている私を自分の胸元に引き寄せる。
「ごめん。俺、調子乗ってた。恭子さんがイきやすい体質なのいいことに、無理強いしてたかも」
「えっ……や、あの、無理強いだなんて思ったことはないよ?」
「……優しくされると、余計ヘコむんだけど」
今度はさっきとは反対に、私の胸元に杏介くんがぐりぐりと頭を押し付けてきた。
実家の犬もよくこんな風に甘えてきたなぁ、なんて思い出しながら、少しうねった彼の髪をそっと撫でる。
「……恭子さん、幻滅した?」
「えっ? なんでそう思うの?」
「自分本位のセックスばっかりする男だから」
「そ、そんな風に思ったことないよ。ただ、その、もうちょっと手加減してほしいというか……」
「うん……ごめん。めっちゃ反省してるから、嫌いにならないで」
縋りつくように抱き締められ、私は内心驚きながらももう一度杏介くんの頭を優しく撫でた。
杏介くんはいつも余裕たっぷりで、一つ年上のはずの私がリードしてもらうことの方が多い。
女の子の格好で出歩くことで、今まで他人から好奇の目で見られることがあったとしても、好きなものは曲げられないといって貫いてきたのが杏介くんだ。それも、自分に自信を持っているからこそできたことだろう。
そんな彼が自信を無くしている姿を初めて目の当たりにして、私はどう声をかけたらいいか戸惑ってしまう。
「あの……杏介くん? ごめん、変なこと言って。そんなことで嫌いにならないから、あの、続き……する?」
「……する、けど」
あ、それはするんだ。
心の中で思ったけれど、声に出したらまた彼がへこんでしまいそうだからやめておいた。
代わりに、きゅっと引き結ばれたままの彼の唇に軽いキスをする。
「ね、杏介くん。じゃあさ、今度は杏介くんの気持ちいいとこ教えて?」
「え……俺の?」
「うん。その、杏介くんみたいに上手にはできないかもしれないけど……が、頑張るから!」
寝転んだまま、そっと彼の下半身に手を伸ばす。さっきよりもだいぶ大人しくなってしまった彼自身に優しく触れると、びくっと体全体が跳ねた。
「ぅあ、ちょ、ちょっと待って……、恭子さん、そんなことしなくていい」
「私がしたいの。だめ?」
「だ……だめじゃ、ないけど……」
つい先ほども同じような会話を交わした気がするが、今は立場が逆転している。
それが何だか面白くて、私は拙いながらも夢中で彼の陰茎を愛撫していった。
「ん、ふっ……、恭子さん、無理してない?」
「してないよ。ね、どうやって触ったら気持ちいい?」
「えー、と……あっ、それ……っ、そうやって、下から撫でられるの、気持ちいい」
「こ、こう……?」
「うっ……! っあ、も、もういい、恭子さん、手ぇ離して……っ」
杏介くんの息が乱れて、時折甘い声が漏れるのが嬉しい。
離して、と言われたけれど、私は構わずに熱い滾りを撫で続けた。
言われた通りに根元から擦り上げるように手のひら全体で触れて、それから先端の少しくびれた部分を指先でくすぐる。杏介くんが何か言いたげに私の腕を掴んだが、本気で嫌がっているわけではなさそうだ。
「はあっ、もう……! 恭子さん、じょうず……」
「ほ、ほんと? よかったぁ……」
「うん……でも、本当にそろそろ離して。もう一回、恭子さんの中に入りたい……」
少し掠れた甘い声で請われて、私は素直に頷いた。
そして、今度は私の体を仰向けにさせると、その上に杏介くんが覆い被さってくる。手早く避妊具を付け直してから、彼は余裕のない表情で自身の先端を蜜口に押し当てた。
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