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「おいで、恭子さん」
ホテルの大きなベッドの上に座って、杏介くんが両腕を広げる。バスローブを一枚羽織っただけの私は、導かれるようにそろそろとその腕の中に入っていった。
「恭子さん、どうしてほしい?」
「……キス、してほしい」
分かった、と優しく微笑んでから、杏介くんがそっと私の顎をすくう。そして私が目を瞑るのと同時に唇が重なって、その温かさがじんわりと私の心を癒してくれるような気がした。
黙って口づけを受け入れていると、そのうち彼の舌が私の口内に入り込んできた。ぴくりと肩を震わせたものの、その感覚も心地よくて、私は拙いながらも必死に彼の舌に自分のそれを絡める。くちゅ、と湿った水音が部屋に響いた。
「ふ、はぁっ……、杏介くん、もっと……」
「もっと? ふふっ、今日は欲張りだね」
「……欲張りなのは、いや?」
「ううん。大好きだよ」
ほんのりと頬を紅潮させた杏介くんが、本当に愛しそうにそう言うものだから、照れ臭くなって思わず俯いてしまった。しかし、すかさず顎を持ち上げられて、もう一度ゆっくりと口づけられる。
「恭子さん、今日はどうしてほしい?」
「っ、え……どう、って」
「いつもと同じがいい? それとも、いつもよりもーっと気持ちよくしてほしい? ああ、恭子さんが望むならちょっと痛い系のプレイでもいいけど」
「えっ!? い、痛いのはいやっ」
「そう? じゃあ、どうしよっか?」
杏介くんの整った指先が、唾液で濡れた私の唇をつつっとなぞる。その優しい手つきに促されるかのように、私はたどたどしく答えた。
「い……いつもと、同じじゃなくて」
「うん」
「そ、その……いつもより、もっと、気持ちよくしてほしい……杏介くんの、好きにして」
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