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覚悟
「五月……。一緒に、お母さんの田舎に行く?」
お母さんの、田舎?
母の田舎が何処なのか知らないし、行ったこともない。すぐは返事が出来なかった。
「五月は、会ったことないけどね。お母さんの……。五月のお婆ちゃんが住んでるの」
「お婆ちゃん……」
小さい頃から、不思議だった。わたしは、母方の祖父母に会ったことがない。
でも。お婆ちゃんが居るなら、心強いな。
「行きたい」
ここではない、何処かに行きたいと思った。
「……覚悟は、出来てる?」
「覚悟?」
何だろう?
「その村で暮らすには、ある『試験』をクリアしないといけないの」
「……お母さん、は?」
「受けたわ。合格して、県立高校に通った」
「凄い!でも、難しそう」
苦手なんだよね。勉強……。
「五月なら、大丈夫よ」
「そうかな?」
「大丈夫。あなたは、選ばれた子なんだから」
選ばれた子。その言葉が、不安を押し殺してくれる。
「わたし、頑張る。……ここから、離れられるなら」
クラスメイトの顔を見ずにすむのなら。どんな『試験』でも、構わない。
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