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あなたを貸してください
夜明青翔(よあけ あおと)は、困惑していた。
目の前の男は、今なんと言った?
聞き違いでなければ、こう言った。
「夜明青翔さん、あなたを貸してください」
確かにここは貸出窓口だ。
でも、あいにく人は貸し出していない。
首の名札の名前を読んだようだ。
「申し訳ございませんが、人の貸し出しは行なっておりません。
本のご相談でしたら、隣のレファレンスサービスでお願いします」
俺は男に告げた。頭がおかしい奴か?
「では、少しあなたのことを教えていただきたいのですが」
「申し訳ございません。
業務中ですので、個人的なお話はできません」
「では、業務時間後に…」
「今から休み時間なので、連れて行っていいですよ」
後ろから主任が言った。
俺は、余計なことを!とイラッとする。
主任に肩を押され、ニコニコと人なつこそうに笑う男に手を引かれ、外に連れ出された。
「ここにいてください」
主任の手を掴む。
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