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モデルデビュー?
常盤とはなかなか予定があわなくて、会えていない。
常盤といる時間は楽しかったけど、俺は常盤と会ってもいいのだろうか。
常盤と行った書店で買った室川潤の「星の砂」という本を読んだ。
主人公は女Ω。好きなαと番になったけど、番のαは女αと政略結婚する。
女Ωはαと一緒にいられなくても子どもと2人、幸せに暮らしている。
主人公は幸せを見つけた。
与えられることだけが、幸せじゃない。その場所で精一杯の幸せを見つけるということ。幸せの形は星の数ほど違う。
考えさせられる。
星の砂は、南の島の海岸で見られるそうだ。αが女αと結婚する前に、2人は最後の旅行をした。
星の砂の海岸を散歩する光景が涙を誘う。
夕方、大学から家に帰ったら、朱夏の事務所の並木さんが来ていた。並木さんは20代半ばくらいの男Ω。モデルを引退して、マネージャーをしているそうだ。すごく綺麗で優しい人だ。
なんだか深刻な話のようなので、邪魔しないようにまた大学に戻ろうと思った。
「待って。青翔くん」
並木さんが俺を引き止める。
「青翔くん、事務所を助けてくれ」
朱夏がΩのモデルと、カップルコーデを撮影する企画だったけど、Ωのモデルが直前になって渋っているらしい。朱夏の引き立て役は嫌なんだそうだ。
Ωのモデル自体が少ないから、代役が見つからず、困っているらしい。
並木さんなら大丈夫なんじゃないかと思うけど、できない事情があるようだ。
朱夏は厳しい顔をしている。
「青翔くん、お願いします。顔は出さないようにするから」
「仕方ない。今回だけですよ。青翔は顔は晒さないし、屋外の撮影は駄目です」
朱夏が答える。
また俺の意見はスルーでしょうか。
最近俺の話を聞いてくれない人、多いな。
朱夏のマンションに住まわせていただいているので、逆らえないけど。
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