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追われる
雑誌の写真は好評だったようだ。
あの後ろ姿美人は誰?という記事も出ていたみたい。
あのお姫様抱っこも撮られていてびっくりした。
雑誌の朱夏はカッコよかった。
恋人を思ってるんだろうなという温かい表情。相手が俺で申し訳ない。
現場で朱夏を見ていたら、ドキドキしていただろう。
夕方、家に帰ろうとしていたら、朱夏から電話があった。
「俺と雑誌のモデルが同棲してるって記事が出た。今うちの周りをウロウロしてる奴がいて追い回されるから、お前はしばらく帰らない方がいい」
俺の実家からは遠くて大学には通えない。
普通のビジネスホテルは突然発情が起きたらと考えると使えない。
発情期でも泊まれるホテルもあるけど、都心かリゾート地にある。長期間泊まることを考えると毎日大学に通うのも大変だ。それに、そもそも俺のバイト代では何十万円かになりそうなホテル代は払えない。
友達もいないし、泊めてくれる人も思いつかない。
一人暮らしだと言っていた常盤に電話する。家にいるそうで、良かった。
「常盤、突然だけど、しばらく泊めてくれない?」
「もちろん、構いません。このままずっといていただいてもいいです」
朱夏にも常盤の家に泊まることを報告する。
常盤は車で迎えに来てくれた。
近くの店で着替えなど必要なものを手早く買う。
途中で経緯を説明する。
「あの写真は私も見ました。すぐに青翔さんだとわかりました。妬けました」
「朱夏とは何もないよ」
「わかってます。
朱夏さんはあなたを大切にされているようです。お気づきではないようですが、青翔さんは朱夏さんに厳重にマーキングされてますよ」
αは自分の恋人のΩに自分の匂いをつけて他のαを牽制する。マーキングで俺を守ってくれていたのかも。
「常盤は朱夏のマーキングは気にならなかったのか?」
「番ってないなら、諦められないと思ったまでです」
結構、思いっきりいいんだな。
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