初デート

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初デート

いつの間にか、常盤に住所を教えていた。車で迎えに来てくれるそうだ。 話しているとどんどん奴のペースに巻き込まれている。 常盤は半袖シャツにチノパンのカジュアルな服装。 黙っていれば、人目を惹く外見なんだけど、性格が残念すぎる。 常盤は人なつこい笑顔だ。この顔を見ると、なんだか冷たくできなくなる。 俺は例のつばの広い帽子とサングラス。今日は暑いから室内では脱げるように半袖Tシャツの上に長袖のシャツを羽織っている。 行きたいと思っていた、郊外に出来たばかりの大型書店に着いた。 書店は素晴らしかった。 品揃えが豊富なのは当然かもしれないが、じっくり本を選べる工夫がされている。 手前では、親子がキッズコーナーでたくさんの絵本を並んでいる。一つ一つゆっくり読んで選んでいる。 奥の方は大人のスペース。 立ち読みではなく、試し読み。 座って本を読むことができる。 書店員たちの熱いおすすめメッセージを読むのも楽しい。 買いたいと思ってた本が見つかった。 室川潤の新刊。 書店員の手書きのメッセージには、こう書かれている。 「全てのΩとΩを愛するあなたへ "泣ける"じゃない、"泣きたくなる" あなたは気づく Ωの幸せは一つじゃない」 すごく気になる。読みたい。 「青翔さんは室川潤が好きですか?」 「好き。大好き」 Ωで嫌いな人はいないんじゃないかと思う。
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