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「何の記念日でもないから今日にしたんだ。くるみの誕生日はバレンタインデーだし、プロポーズしたのはクリスマスでしょ? だから、入籍する日はそういうイベントの日じゃなくて、俺たちが入籍した日っていうのにしたかったんだ」
にっこりと微笑む稜サンの手を握った。
「わたしたちだけの特別な日ってこと?」
「そう。くるみは何かの記念日かイベントの日がよかったかな?」
「ううん。説明聞いて納得した。すごく素敵だと思う」
稜サンはいつもわたしが思いつかないようなことを考えている。
そして、わたしをとびきり感動させる。
この人と結婚できてよかったなって、ちらりと美しい横顔を見上げて思う。
「……ありがとう」
「えっ!?」
急にお礼を言われ、心の声が漏れてしまったのかと焦る。
「俺の奥さんになってくれて」
何の前置きもなく普通のトーンでサラッと言われ、心の準備をする余裕もなかった。
思いがけない言葉はダイレクトに涙腺を刺激した。
「やだ……」
「泣き虫だね、くるみは」
言いながら、稜サンはわたしの顔を覗き込んで微笑んだ。
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