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「急にそんなこと言われたら、誰だって泣いちゃうよー」
繋いでいない方の手で涙を拭いながら、彼の言葉を噛み締める。
噛めば噛むほど味……じゃなくて幸せな気持ちが溢れ出す。
「稜サン大好き」
テンションが上がりきったわたしは、ここが外だということも忘れ、横から思い切り抱きついて言った。
「まだお昼だし、誰が見てるか分からないから」
照れ臭そうに稜サンは周りを確認した。
「あっ、ごめんなさい」
自分の大胆さに驚き、急いで離れた。
「嬉しいけど、家まで我慢して」
「はーい……」
優しい眼差しでわたしを見ながら、稜サンは苦笑するわたしの手を握ってくれた。指と指を絡める、いわゆる”恋人繋ぎ”は初めてで胸がキュンとなってしまう。
どこまでわたしを虜にすれば気が済むんだ、この人は。
はぁ……幸せ。
たわいのない話もやり取りも、ぜんぶ憶えていたくなる。
わたしたちだけに分かる特別な日。
わたしが氷川くるみになった大切な記念日……。
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