Act.1

4/24
2345人が本棚に入れています
本棚に追加
/393ページ
「急にそんなこと言われたら、誰だって泣いちゃうよー」  繋いでいない方の手で涙を拭いながら、彼の言葉を噛み締める。  噛めば噛むほど味……じゃなくて幸せな気持ちが溢れ出す。 「稜サン大好き」  テンションが上がりきったわたしは、ここが外だということも忘れ、横から思い切り抱きついて言った。 「まだお昼だし、誰が見てるか分からないから」  照れ臭そうに稜サンは周りを確認した。 「あっ、ごめんなさい」  自分の大胆さに驚き、急いで離れた。 「嬉しいけど、家まで我慢して」 「はーい……」  優しい眼差しでわたしを見ながら、稜サンは苦笑するわたしの手を握ってくれた。指と指を絡める、いわゆる”恋人繋ぎ”は初めてで胸がキュンとなってしまう。  どこまでわたしを虜にすれば気が済むんだ、この人は。  はぁ……幸せ。  たわいのない話もやり取りも、ぜんぶ憶えていたくなる。  わたしたちだけに分かる特別な日。  わたしが氷川くるみになった大切な記念日……。
/393ページ

最初のコメントを投稿しよう!