Act.1

5/24
2345人が本棚に入れています
本棚に追加
/393ページ
 せっかくだからドレスコードのあるような贅沢なレストランで食事することも考えてくれていたらしいけど、夫婦になった記念の日だからこそ家で食べたいって言ってくれた。  普段は行けないようなお店のゴージャスなディナーの方が美味しいことは分かりきっているけれど、それでもくるみの手料理が食べたいって言ってくれる心遣いが嬉しくて。  自分でも単純だなって思う。  わたしを喜ばせるくらい、稜サンなら赤子の手を……だね、きっと。  スーパーに寄って、食材と乾杯用のワインを買った。 「安物だけど、このワイン結構いけるんだよ」  おすすめのワインに期待も膨らむ。  家に帰ると、早速お料理に取り掛かった。メニューは稜サンからリクエストがあったグラタン。  まずはホワイトソースから……段取りを考えながら髪を束ね、エプロンをつける。  お鍋に薄力粉と顆粒コンソメとバターと牛乳を入れ、弱火にかけて。だまにならないよう、すぐにかき混ぜて。とろみがついて火を止めたところで稜サンが「何か手伝おうか?」って言ってくれた。 「う~ん、そうだなぁ……」  玉ねぎでも切ってもらおうかと思っていたら、稜サンが背後からお鍋を覗き込んだ。
/393ページ

最初のコメントを投稿しよう!