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溜息をひとつ吐いて席を立つと、俺は奴の元へ行き、ウエイトレスに事情を伝えた。
彼女はようやく納得したようで、パンケーキの皿を二つ下げてくれた。全部は申し訳ないので、一つは俺が食べることにした。
「えー!! ウソやん! 何で氷川ちゃんがおるん? 久しぶりー!」
奴は立ち上がると、いきなり俺に抱きついてきた。
その様子を見ていた客たちが、日本人のゲイのカップルだと勘違いし、拍手をした。
日本ではあり得ないだろうが、こういうところはいかにも海外だなと思う。
「おい、よせ。ゲイのカップルだと思われてるだろ」
「ほな、みんなの期待に応えてキスでもした方がええかな」
「したら殴るぞ」
「冗談やん。オレかてイヤやわ。せやけど、どないしたん? いきなりびっくりするやんか」
「びっくりしたのはこっちだよ。お前まさか、英語喋れないのか?」
「氷川ちゃんほどベラベラじゃないけど、そら多少はしゃべれますよ、オレかて。けど、興奮したら出てまうねんなぁ、日本語が」
「日本語と言うか、コテコテのに関西弁だったけど」
「そらしゃあないやん。オレ関西人やし」
日本人ではなく、関西人なんだな。
地元愛というか、ここまできたら天晴だと思う。
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