Act.3.5

3/13
2340人が本棚に入れています
本棚に追加
/393ページ
 溜息をひとつ吐いて席を立つと、俺は奴の元へ行き、ウエイトレスに事情を伝えた。  彼女はようやく納得したようで、パンケーキの皿を二つ下げてくれた。全部は申し訳ないので、一つは俺が食べることにした。 「えー!! ウソやん! 何で氷川ちゃんがおるん? 久しぶりー!」   奴は立ち上がると、いきなり俺に抱きついてきた。  その様子を見ていた客たちが、日本人のゲイのカップルだと勘違いし、拍手をした。  日本ではあり得ないだろうが、こういうところはいかにも海外だなと思う。 「おい、よせ。ゲイのカップルだと思われてるだろ」 「ほな、みんなの期待に応えてキスでもした方がええかな」 「したら殴るぞ」 「冗談やん。オレかてイヤやわ。せやけど、どないしたん? いきなりびっくりするやんか」 「びっくりしたのはこっちだよ。お前まさか、英語喋れないのか?」 「氷川ちゃんほどベラベラじゃないけど、そら多少はしゃべれますよ、オレかて。けど、興奮したら出てまうねんなぁ、日本語が」 「日本語と言うか、コテコテのに関西弁だったけど」 「そらしゃあないやん。オレ関西人やし」  日本人ではなく、関西人なんだな。  地元愛というか、ここまできたら天晴だと思う。
/393ページ

最初のコメントを投稿しよう!