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いかなる山に降り注ぐ雨も、いずれ最果ての海に流れ着く。
「私の生まれた所は、これより下れないという場所なのよ」。
「僕もです。遠いようで、案外近いのかも知れませんね」。
「でも、まだまだ下る先が有ったの」。
「みんながみんな、最果てに居なくても良いですよ」。
「そうね。私もずっと居るかどうかは分からないわ。でも、それを知ってしまった以上、どうしても自分の足でそこに辿り着き、自分の目で見てみない事には気が済まなくなったの。何故か待ってる人が居る気がするの」。
「一度その地を踏んだら、仮に戻っても、たぶん元の貴方じゃないですよ」。
「そうね。どうしてそんな場所に惹かれるのか、自分でも分からないんだけど…」。
「僕が知る限り、貴方にはそういう血が流れているんだと思います」。
「嫌な話。貴方も、似たようなものだわ」。
僕は視線を逸した。
次の瞬間には、彼女の冷たい手が僕を掴み、その手を振り払うことは許されない気がした。
「故郷では、愛する人を最後は西に向かう船に乗せて見送るのよ」。
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