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(side由希也)
翌日も、2組はお化け屋敷の準備に追われていた。
教室内はパネルを仕切って迷路のように道が作られ、工作班が作った渾身の墓や卒塔婆が置かれると、それなりにお化け屋敷の体になって来た。
みんな一生懸命作業を続け、午後になり準備が整うと、
「なかなかいいんじゃない」
腰に手を当て、君永が満足げに頷いた。そして、今日も白い着物を着ている杉本をはじめ、お化け班のみんなを振り返り、
「お化け班は衣装とメイクの確認は済んでる?」
と問いかけた。
「おー!」
「ばっちりだぜ!」
「それじゃあ、今日はこれでお開き!みんなお疲れ様!」
君永の声に、
「やったー!」
「明日が楽しみだね」
クラスメイトは口々に言い合いながら、下校の準備を始めた。
俺も、隅に寄せられている机の上から荷物を取ると、
「お疲れ様」
と言って教室を出た。
(1組は準備は終わったのかな)
真殿も練習が終わっているのなら一緒に帰りたいと、窓から1組の様子をのぞくと、大道具が作業をしており、まだ準備中のようだ。劇の練習はしていないようだったが、台本を持ったキャストらしき生徒が雑談をしている様子だったので、もしかすると、今は休憩中なのかもしれない。
(1組はまだまだ終わりそうにないな)
溜息をついて、踵を返す。すると廊下の先に、ふわふわの猫っ毛の女子の後姿が見えた。
(あっ、真殿だ……)
追いかけて行って声を掛けようかと思ったが、彼女はひとりではなかった。隣を歩いているのは一ノ瀬だ。一瞬、躊躇した間に、真殿と一ノ瀬は、廊下の角を曲がって行ってしまった。
(ああ、また、もやもやする。何でそんなに仲良さそうなんだよ)
真殿と一ノ瀬は同じクラスだし、一緒に歩いていたっておかしくはない。そうは思えど、納得できない自分がいた。
(真殿が白雪姫で、一ノ瀬が王子だからかな)
だから余計に気になるのかもしれない。
(明日は、話が出来るといいな……。そして出来れば、一緒に文化祭を回りたい)
俺は思考を切り替えるように努めてそう考えると、昇降口に向かって歩き出した。
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