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【文化祭編】文化祭当日
(side雛乃)
文化祭当日は、秋晴れの好天に恵まれた。
私は、校門の横に立てられた「文化祭」の看板の足もとに、マリーゴールドの鉢を置いた。オレンジ色のマリーゴールドは、鉢いっぱいに花開いていて、我ながら上手に育てることが出来たと悦に入って見ていると、
「あら、綺麗な花ねぇ」
「まあ、本当。マリーゴールドね」
父兄と思しき女性たちが、花を見て微笑みながら校門の中へと入って行った。その言葉に嬉しくなり、私はひとりでふふっと笑うと、教室へ戻るため踵を返した。
私達のクラスの演劇は、昼の1時から体育館で行われることになっており、昼前に教室でリハーサルをする予定だった。一ノ瀬君の特訓のおかげで、台詞はほぼ完璧に頭に入っている。
(劇も頑張る!)
決意を新たに昇降口へと入ると、1階の廊下を歩く蛍の姿を見つけた。
「あ、蛍!どこへ行くの?」
声を掛けると、蛍は振り返り、
「あら、ヒナ。私はこれから、かるた部の様子を見に行くところよ」
と返事が返って来た。
「蛍の『源平合戦100人抜き』は何時からなの?」
と尋ねると、
「午後2時からよ。劇が終わったすぐ後ね。その前に、後輩たちがちゃんと準備をしてくれているのかどうか、確認しに行こうと思って」
「挑戦者のエントリーは、何時から受け付けているの?」
「もう受け付けているわよ。部室に行けば後輩がいるから、その子に言ってもらえればいいわ。……なぁに?もしかして、ヒナも私と戦いたいの?」
蛍はふふっと笑うと、挑戦的な眼差しで私を見た。
「考えておく」
私も挑戦的に笑い返すと、蛍に手を振って別れた。
(一ノ瀬君はもうエントリーしたのかな?)
そんなことを考えていると、ハッとあることを思い出した。
(そういえば、かるた!昨日、旧校舎に持って行ったまま、置きっぱなしだ!)
一ノ瀬君とのかるたの練習の後、すぐに劇の練習に入り、そのまま熱中してしまったため、かるたから意識が離れ、持って帰るのを忘れてしまった。
「失くしたら大変だ。お母さんに怒られちゃう!」
私は慌てて、足早に旧校舎へと向かった。
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